モスクワ地下鉄オレンジ線北端の駅。1978年開業、ニーナ・アリョーシナらの設計による。北方の自然を主題とし、流氷や白熊、トナカイの橇などを金属パネルに表した後期ソ連の装飾駅である。
§1 — 概要概要
メドヴェドコヴォ駅(Медведково)は、モスクワ地下鉄カルーシュスコ=リシュスカヤ線(オレンジ線)の北の終端に位置する駅である。1978年9月29日に開業し、建築家ニーナ・アリョーシナとナターリヤ・サモイロワの設計による。駅名は一帯の地名メドヴェドコヴォにちなみ、その語はロシア語で熊(медведь)を語源とする。
歴史
本駅は、モスクワ北部の住宅地の拡大に合わせて、カルーシュスコ=リシュスカヤ線を北へ延伸する事業の一環として建設された。設計はアリョーシナとサモイロワが主導し、技師ヴォロヴィチや美術家アレクセーエフらが加わった。アリョーシナは1970年代から80年代にかけてモスクワ地下鉄の数多くの駅を手がけた建築家で、本駅もその仕事のひとつに数えられる。スターリン時代の華麗な「人民の宮殿」から、1960年代の簡素な規格型駅をへて、1970年代半ばには装飾性がふたたび部分的に回復された。本駅はその流れのなかで、地域の自然を主題に据えた装飾的な駅として計画されたものである。
建築的特徴
駅は地下浅くに設けられた島式構造で、プレハブ工法による二十六本の柱が二列に並ぶ。柱は黄色と桃色がかった大理石で覆われ、ステンレスの帯で縁取られる。線路側の壁面は赤い大理石で仕上げられ、陽極酸化アルミニウムと青銅のパネルが連なる。パネルには氷を象徴するピラミッド状の形が刻まれ、北方の自然という主題のもと、雁の群れ、猟師、流氷に乗る白熊、トナカイの橇といった情景が表されている。床は灰色と黒の御影石で舗装される。規格化された構法のなかに地域性と物語性を織り込もうとした、後期ソ連の駅づくりの工夫がうかがえる。
意義・現在
メドヴェドコヴォ駅は、装飾を切り詰めた1960年代の駅から、主題をもった装飾的な駅へと回帰しつつあった時期のモスクワ地下鉄を示す好例である。華美な石材や記念碑性ではなく、金属パネルの図像によって土地の自然を語ろうとした点に、後期ソ連の駅装飾の方向性が表れている。現在も日々多くの乗客が利用する現役の駅であり、設計者アリョーシナの仕事を伝える一例として親しまれている。