ソコルル・メフメト・パシャ橋 Mehmed Paša Sokolović Bridge
ボスニアのドリナ川に架かるオスマン期の石橋。大宰相ソコルル・メフメト・パシャの命で名匠ミマール・スィナンが設計し1577年に完成した、11連アーチの世界遺産。アンドリッチの小説でも知られる。
§1 — 概要概要
ソコルル・メフメト・パシャ橋(Most Mehmed-paše Sokolovića)は、ボスニア・ヘルツェゴビナ東部、スルプスカ共和国のヴィシェグラードでドリナ川に架かる石橋である。オスマン帝国の大宰相ソコルル・メフメト・パシャの発願により、宮廷建築家ミマール・スィナンが設計し、1577年に完成した。全長約180メートル、11の石造アーチを連ねるその姿は、オスマン建築の土木技術の到達点を示すものとして、2007年に世界遺産に登録された。
歴史
発願者のソコルル・メフメト・パシャは、ヴィシェグラード近郊に生まれ、デヴシルメ(人材徴用)によって登用されてついには大宰相にまで上り詰めた人物である。橋は故郷を流れるドリナ川に架けられ、1571年頃に着工して1577年に竣工した。設計を担ったミマール・スィナンは、オスマン建築の黄金期を代表する建築家であり、生涯に数多くのモスクや橋梁を手がけた巨匠である。橋は東西を結ぶ交通の要衝として、また周辺地域の生活と歴史の舞台として、長くこの地に立ち続けてきた。
建築的特徴
橋は11連の迫石造アーチからなり、各径間は11メートルから15メートルにわたる。中央のアーチほど大きく、両岸に向かって緩やかに低くなる構成は、力学的な合理性と視覚的な均衡を両立させている。西岸には、直角に折れる導入路(ランプ)が取りつく。切石を精緻に積み上げた構造は、装飾を抑えながらも端正で、水面に映る連続したアーチの輪郭が、橋の名声を支える美しさを生んでいる。オスマン古典期の橋梁技術の精華といえる。
意義・現在
この橋は、ノーベル文学賞作家イヴォ・アンドリッチの長編小説『ドリナの橋』(1945年)の舞台として、世界的に知られている。橋を定点として数世紀にわたる地域の歴史を描いたこの作品によって、橋は文学的な記念碑としての性格も帯びることになった。20世紀の洪水や戦災による損傷を経て修復が重ねられ、現在も歩行者用の橋として用いられている。土木と文学が交差する稀有な遺産である。