マルセイユの旧港に建つ国立博物館。2013年開館。ルディ・リチョッティの設計で、UHPFRC製のレース状の外被に覆われた現代建築として知られる。
概要
ヨーロッパ・地中海文明博物館(MuCEM)は、フランス南部の港湾都市マルセイユにある博物館である。マルセイユが欧州文化首都となった2013年に開館した。地中海世界の文明と文化を主題とする国立博物館で、旧港の入口に建つJ4棟、対岸の歴史的なサン・ジャン要塞、内陸の保存資料センターから構成される。
歴史
MuCEMは、パリにあった国立民俗芸術伝統博物館の収蔵品を継承する形で構想された。設計競技を経てルディ・リチョッティが設計者に選ばれ、歴史的建造物の改修を得意とするロラン・カルタが協働した。海に面した埋立地に建つJ4棟の建設は2009年に始まり、2013年6月7日に開館した。サン・ジャン要塞との間は高架の歩廊で結ばれ、新旧の建築が一体の文化施設として再編された。
建築的特徴
J4棟は一辺約72メートルの正方形の平面をもち、内側に展示空間の箱を据え、その周囲を回廊状の空間が取り巻く。最大の特徴は、建物を覆うレース状の外被である。これは超高性能繊維補強コンクリート(UHPFRC)によって成形された繊細な格子で、地中海の強い日射を和らげながら、内部に揺らめく木漏れ日のような光を導く。屋上へと続くスロープや、樹木のように枝分かれする細い支柱も同じ素材で造られ、コンクリートでありながら軽やかで有機的な表情を生み出している。サン・ジャン要塞へと架かる長さ約135メートルの歩廊も、この建築の劇的な体験を構成している。
意義・現在
MuCEMは、現代建築における素材表現の到達点の一つとして高く評価され、マルセイユ臨海部の再生を象徴する施設となった。地中海をめぐる多様な文明を扱う展示とともに、海と要塞を望む建築そのものが大きな魅力となっており、開館以来この街を代表する目的地の一つとなり、年間を通じて多くの来館者を集めている。地中海という主題と、それを体現する建築とが結び合う点に、この博物館の独自性がある。
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