ニーダーザクセンシュタディオン Niedersachsenstadion
ドイツ・ハノーファーのサッカー専用スタジアム。第二次大戦の瓦礫を盛って1954年に築かれ、2006年ワールドカップに向けてシュリッツらの設計で全面改築された、ハノーファー96の本拠地である。
§1 — 概要概要
ニーダーザクセンシュタディオン(Niedersachsenstadion)は、ドイツ北部の都市ハノーファーにあるサッカー専用スタジアムである。マッシュ湖に近いスポーツ公園の一角に位置し、ブンデスリーガの古豪ハノーファー96が本拠地とする。1954年の開場以来、ドイツ代表戦や国際大会の舞台として幾度も改築を重ねてきた。命名権により近年はハインツ・フォン・ハイデン・アレーナ(Heinz-von-Heiden-Arena)等と呼ばれるが、ニーダーザクセン(下ザクセン)州の名を冠した旧称が今も広く通用する。
歴史
建設は戦後復興期にあたる。第二次大戦でハノーファーは激しい空襲を受け、市街には大量の瓦礫が残された。スタジアムはこの瓦礫を運び入れて巨大なすり鉢状の土手を築き、その斜面を観客席とする方式で1954年に完成した。当初の収容は8万6千人を超え、当時の西ドイツではベルリンのオリンピアシュタディオンに次ぐ規模であった。以後、ワールドカップや欧州選手権など大会のたびに改修が施される。とりわけ2003年から2005年にかけては、ブラウンシュヴァイクのシュリッツ・アーキテクツ(Schulitz + Partner)の設計でピッチを掘り下げ、軽量の膜屋根で客席全体を覆う大規模な再建が行われ、現在の姿となった。
建築的特徴
原型は、土を盛って客席をつくるという素朴かつ合理的な発想に立っていた。瓦礫の山を整形した土手は経済的であると同時に、観客を一体の鉢の中に包み込み、独特の音響と熱気を生んだ。2005年の改築では、この土の器を生かしつつ、鋼のマストとケーブルで支える片持ち式の膜屋根を架け、全席を覆った。透光性のある膜は内部に柔らかな光を落とし、土の土手という古い構造と、張力で軽やかに浮く現代の屋根とが重なり合う。
意義・現在
ニーダーザクセンシュタディオンは、戦災の瓦礫を文字どおり土台に変えて生まれた、戦後ドイツの再生を象徴する建築である。素材を捨てずに地形へ転用した発想は、巨大構造物が常に新材を要するわけではないことを示す。現在も改修を経て約4万9千の屋根付き観客席をもち、ハノーファー96のホームとして、また各種イベントの会場として使われ続けている。