上海・浦東の陸家嘴に立つ高さ468メートルのテレビ塔。華東建築設計研究総院の江歓成が設計を主導し、大小11個の球体を連ねた姿は、改革開放期の上海を象徴するランドマークとなった。
§1 — 概要概要
上海市浦東新区の陸家嘴(ルーチアズイ)地区、黄浦江の畔に立つ高さ468メートルの電波塔・展望塔である。1994年の完成以来、対岸の外灘(バンド)の歴史的建築群と向かい合い、急成長する上海の象徴として親しまれてきた。設計は華東建築設計研究総院(ECADI)が担当し、構造技術者の江歓成が設計を主導した。大小11個の球体を3本の斜めの柱で貫く独特の構成で知られる。
歴史
浦東開発の象徴的事業として計画され、1988年の設計競技でECADIの「東方明珠」案が選定された。1991年7月30日に着工し、1993年に塔体が完成、1994年の労働節にアンテナが据え付けられ、同年10月1日の国慶節に内部施設が稼働して竣工した。完成時の468メートルはカナダ・トロントのCNタワー、ロシアのオスタンキノ・タワーに次ぐ世界第3位の高さで、2007年に近隣の上海環球金融中心に抜かれるまで中国一の高さを保った。デザインは唐代の詩人・白居易「琵琶行」の一節——大小の珠が玉の盤に落ちる音——になぞらえて語られることが多いが、設計者の江歓成自身は設計の際にこの詩を意識してはいなかったと述べている。
建築的特徴
塔は3本の傾斜した支柱と、それらを貫いて連なる11個の球体から構成される。下部の大きな球体と上部の球体(宇宙モジュール)に展望フロアが設けられ、地上263メートルと350メートル付近から市街を一望できる。後には透明なガラス床の回廊が設けられ、中国初の全周ガラス床展望として話題を呼んだ。傾斜柱と球体を組み合わせた構成は、強風や地震に対する安定性を確保しつつ、力学的な骨組みそのものを造形として見せる、構造表現的なアプローチといえる。
意義・現在
東方明珠電視塔は、1990年代初頭の浦東開発の口火を切ったプロジェクトであり、上海が国際金融都市へと変貌する起点を象徴する建築である。完成後は金茂大厦、上海環球金融中心、上海中心大厦といった超高層が周囲に林立し、塔はそのスカイラインの先駆けとなった。放送施設であると同時に、展望台・回転レストラン・上海歴史博物館などを擁する観光施設として、現在も年間数百万人を集める上海有数の名所である。