マダガスカル中央高地、アンタナナリボの丘上に営まれた歴代王朝の王宮複合体。1839年に木造で建てられた主宮殿マンジャカミアダナを、1867年にジェームズ・キャメロンが石造で覆い、折衷主義の威容を与えた。1995年の火災で焼失したが再建された。
§1 — 概要概要
ロヴァ(Rova)はマダガスカル語で柵に囲まれた王の居所を指し、アンタナナリボのロヴァは中央高地の最高地点アナラマンガの丘上に営まれた歴代王朝の王宮複合体である。17〜18世紀にはイメリナ王国、19世紀にはマダガスカル王国の君主がここを拠点とした。複合体の中心をなす主宮殿マンジャカミアダナ(Manjakamiadana)は、石造の外観によって丘上から首都を睥睨する象徴的存在である。
歴史
丘上の最初の砦は、1610年前後にアナラマンガを奪取したとされるイメリナ王アンドリアンジャカによって築かれた。以後の王たちは木造の宮殿や墓廟を増改築し、19世紀の統一マダガスカル王国期に複合体は最大規模に達した。主宮殿は二段階で建てられている。1839〜40年、ラナヴァルナ1世の命でジャン・ラボルドが全体を木造で建造し、1867年、ラナヴァルナ2世がジェームズ・キャメロンに依頼して木造構造を石の外殻で覆わせた。1995年11月の火災は複合体のほぼ全構造を焼いたが、石造の外壁は残り、長期の修復事業を経て2025年に再建が完了した。
建築的特徴
マンジャカミアダナは、ラボルドによる木造の身体に、キャメロンの石造外殻を着せた重層的な構造をもつ。三層に積み上げられた石壁は7万を超える花崗岩で構成され、四隅に塔を備えた左右対称の姿は、ヨーロッパの古典主義とマダガスカル在来の木造意匠を接ぎ合わせた折衷的な所産である。屋根の妻飾りには銀製の彫刻が掲げられ、王権の象徴とされた。複合体内には王墓や礼拝堂など、用途を異にする建物が併存する。
意義・現在
ロヴァはマダガスカル王国の権力と国民的記憶が集約された場であり、独立後も国家の象徴とされてきた。世界遺産登録が目前とされた矢先の1995年の火災は、放火説も絶えない大きな喪失であった。火災を免れた石壁を核として、政府資金と国際的な支援のもとで段階的に修復が進められ、現在は丘上の景観が回復している。植民地化以前のアフリカ王権が遺した記念碑として、なお特別な位置を占める。