欧州中央銀行本部ビル Seat of the European Central Bank
ドイツ・フランクフルトに建つ欧州中央銀行(ECB)の本部。コープ・ヒンメルブラウの設計で2010年に着工、2014年に完成した。双塔の超高層棟と1920年代の旧中央卸売市場ホールを組み合わせた脱構築主義の複合施設である。
§1 — 概要概要
欧州中央銀行本部ビル(Seat of the European Central Bank)は、ドイツ・フランクフルト・アム・マインに建つ、欧州中央銀行(ECB)の本部施設である。双塔の超高層棟と、1920年代に建てられた旧中央卸売市場ホール(グロースマルクトハレ)、両者をつなぐ低層棟からなる複合体で、ウィーンの建築事務所コープ・ヒンメルブラウ(Coop Himmelb(l)au)の設計による。ECBは欧州連合の条約により、本拠地をフランクフルト市内に置くことが定められている。
歴史
1999年、ECBは新本部の設計を国際コンペにかけ、ヴォルフ・D・プリックス率いるコープ・ヒンメルブラウの案が選ばれた。当初は2008年10月の着工が予定されたが、世界金融危機のさなかで予算内の施工業者が見つからず、計画は一時中断した。その後、入札を分割して再開し、本格的な工事は2010年2月に始まった。建物は2014年に完成し、職員は同年11月に旧庁舎ユーロタワーから移転、2015年3月18日に正式に開所した。開所の前後には、緊縮政策に抗議する社会運動による大規模なデモが行われた。総事業費は13〜14億ユーロに上った。
建築的特徴
主棟は二つの塔がアトリウムで結ばれ、四つの空中プラットフォームが両塔を架け渡す。北棟は45階・屋根高185メートル、南棟は43階・165メートルで、アンテナを含めると北棟は201メートルに達する。傾いた面と鋭角的な構成は、コープ・ヒンメルブラウらしい脱構築主義の造形を示す。敷地に残る旧中央卸売市場ホールは、1926年から1928年にかけて「新フランクフルト」計画の一環として建てられた建築で、当時世界最大の幅を誇るモノコック構造の薄殻屋根をもち、改修のうえ本部の一部に組み込まれた。
意義・現在
欧州中央銀行本部ビルは、ユーロ圏の金融政策を担う中枢であると同時に、歴史的建造物の保存と現代の超高層建築とを一体化させた点で注目される。新旧の建築を接合する構成は、20世紀の産業遺産をいかに現代の用途へ転用するかという、現代建築の主題をよく体現している。フランクフルト東部、マイン川沿いに立つそのシルエットは、欧州統合を映す象徴的な風景の一つとなっている。