ヨハネスブルグ郊外に建つアフリカ最大のサッカー競技場。2010年W杯に向けボーガートマン・パートナーズとポピュラスが既存スタジアムを改築し、アフリカの土器「カラバッシュ」を象った外皮で包んだ。決勝戦の舞台となった。
§1 — 概要概要
FNBスタジアム(FNB Stadium)は、南アフリカ・ヨハネスブルグ郊外ナスレックに建つサッカー・ラグビー兼用の競技場である。2010年のFIFAワールドカップでは「サッカー・シティ(Soccer City)」の呼称で大会の中心会場となり、収容約94,700人とアフリカ最大の規模を誇る。アフリカの伝統的な土器「カラバッシュ(瓢箪)」を象った外観から「ザ・カラバッシュ」とも呼ばれる。設計は南アフリカのボーガートマン・パートナーズと、競技場建築を専門とする国際的設計事務所ポピュラスの共同による。
歴史
前身のスタジアムは1980年代後半に建設され、1989年に開場した。1990年に釈放されたネルソン・マンデラがヨハネスブルグで最初の演説を行った場所であり、反アパルトヘイト運動の記憶と結びつく。2010年大会の招致に伴い、既存の構造躯体を生かしつつ大規模な改築が決定された。カラバッシュの構想は2006年に選定され、約8万立方メートルのコンクリートと多量の鉄骨を投じた工事を経て、2009年10月に竣工した。開幕戦と決勝戦(オランダ対スペイン)の舞台となり、閉会式ではマンデラが最後の公の場に姿を見せた。2013年には彼の追悼式もここで営まれた。
建築的特徴
スタジアムの本体は既存の観客席を三層に拡張した擂鉢状のボウルで、その全体を覆うのが外皮=カラバッシュである。八色・二種の質感をもつ繊維補強コンクリートのパネルをモザイク状に組み、下部を暗く上部を砂色へと階調づけることで、土器を焼く炎と土の色合いを表す。外皮には開口とガラスのパネルが点在し、夜に内部が照らされると土器に穿たれた孔のように光る。基部をめぐる照明の帯は、土器の下で焚かれる火を思わせる。屋根は巨大な三角形のリング・トラスから張り出すPTFE膜で、上段席を覆う。
意義・現在
サッカー・シティは、近代的な競技場建築に明快な文化的物語を与えた事例である。スタジアムという機能本位の建築類型に、アフリカ大陸を象徴する器物の形を与えることで、新興国が初めて開催したワールドカップの誇りを可視化した。大会後も国内代表戦やクラブの試合、大規模なコンサートの会場として使われ続け、ヨハネスブルグの象徴的なランドマークであり続けている。