デンマーク、シェラン島の都市ロスキレに建つ福音ルーテル派の大聖堂。12世紀後半…
北ドイツ・ハンザ同盟の中心都市リューベックの旧市街に立つ煉瓦造のゴシック教会。13〜14世紀に建てられ、世界一高い煉瓦ヴォールトをもつ「ブリック・ゴシックの母」として、バルト海沿岸の約70の教会の規範となった。
§1 — 概要聖マリア教会(ドイツ語: Marienkirche、正式には St. Marien zu Lübeck)は、ドイツ北部、ハンザ同盟の事実上の盟主であったリューベックの旧市街に立つ福音主義(ルター派)のバシリカ式教会である。旧市街の島でもっとも高い地点、市庁舎と市場のすぐそばに築かれた。石材に乏しい北ドイツで煉瓦のみを用いて壮大なヴォールト架構を実現した点に最大の特徴があり、北ドイツ煉瓦ゴシック(ブリック・ゴシック)の規範作とされる。市民とリューベック市参事会の主教会として、富と自治の象徴であり続けてきた。
現在の聖堂の前身は、12世紀後半に建てられた木造の教会と、それを13世紀半ばまでに置き換えたロマネスク様式の煉瓦教会である。商業で台頭した市民層の要求に応えるべく、13世紀半ばから現在の高ゴシック様式の建設が始まった。着工はおよそ1250年、献堂は1350年ごろで、完成までにおよそ一世紀を要した。設計の規範はランスなどフランスの石造大聖堂に求められたが、施工は地元産の煉瓦で行われた。1942年の棕櫚の主日、イギリス空軍の爆撃により聖堂は焼け落ち、ブクステフーデらが弾いたとされる「死の舞踏オルガン」をはじめ、中世以来の調度の多くが失われた。応急の屋根で戦中を凌いだのち、1947年から1959年にかけて再建が進められ、内部の設計は1958年に建築家デニス・ボニヴェール(Denis Boniver)の案が採用された。
三廊式のバシリカで、側廊・周歩廊と放射状の小礼拝堂を備える。中央身廊の煉瓦製リブ・ヴォールトは高さ38.5メートルに達し、煉瓦造としては世界最高を誇る。この高さは、ヴォールトが外へ及ぼす横推力をフライング・バットレス(飛梁)で受け止めることではじめて可能になった。フランス・ゴシックの垂直志向を、自然石ではなく規格化された焼成煉瓦に翻案した点に、この建築の独創がある。西正面の双塔は風見を含めて約125メートルあり、旧市街の輪郭を今も決定づけている。煉瓦という素材の制約を逆手に取り、装飾を抑えた量塊と高さそのものを表現とした構築性が、後続の諸聖堂を導いた。
聖マリア教会は、シュトラールズントの聖ニコライ教会やグダニスクの聖マリア教会など、バルト海沿岸の約70の教会の手本となり、「ブリック・ゴシックの母教会」と称される。中世ハンザ同盟の影響力を伝える証として、1987年に旧市街とともにユネスコの世界文化遺産に登録された。戦災からの再建を経た現在もルター派の現役の教会であり、北方ドイツ福音主義教会に属する。破壊と再建の歴史を語り継ぐ場でもあり、南塔には落下して砕けた鐘がそのまま残され、戦争への記念として保存されている。