ツァリツィノ駅は、モスクワ地下鉄ザモスクヴォレツカヤ線の駅。1984年に開業し、後期ソヴィエト時代のモスクワ南部の交通網を支えてきた地下駅である。
§1 — 概要概要
ツァリツィノ駅は、ロシアの首都モスクワを走るモスクワ地下鉄の駅である。市内を南北に貫くザモスクヴォレツカヤ線(2号線・緑線)に属し、モスクワ南部の住宅地に位置する。近隣には歴史的な庭園と宮殿の遺構で知られるツァリツィノ公園が広がり、駅名もこれに由来する。後期ソヴィエト時代に建設された地下駅であり、首都の拡大する交通需要を支える実用的な施設として整備された。
歴史
駅が開業したのは1984年12月30日のことである。当初は「レニノ」と名づけられていたが、開業の翌日に浸水によって一時閉鎖を余儀なくされ、1985年2月に運行を再開した。1990年11月、ソ連末期の改称の流れのなかで、現在の「ツァリツィノ」へと名を改めている。設計は建築家ヴィクトル・チェリョーミンとアレクサンドル・ヴィグドロフが共同で担当した。2022年から23年にかけては、線路の大規模改修にともなう長期の閉鎖期間を経て、再び供用されている。
建築的特徴
ツァリツィノ駅は、柱で天井を支える比較的浅い構造の地下駅である。豪奢な装飾で知られるモスクワ地下鉄の戦前・戦後の名駅とは異なり、1980年代の駅らしく機能性を重視した簡潔な意匠でまとめられている。規格化された柱列とプラットフォームの構成は、量産的な後期ソヴィエトの地下鉄建築の特徴をよく示す。華美を抑えた仕上げのなかに、近接するツァリツィノ公園にちなんだ控えめな装飾が添えられている。
意義・現在
ツァリツィノ駅は、装飾性を競った初期のモスクワ地下鉄から、機能本位の後期の駅へと至る変遷のなかに位置づけられる。豪壮な「地下宮殿」の時代を過ぎた1980年代の駅として、都市インフラとしての地下鉄の性格をよく体現している。今日も多くの通勤客が利用する現役の駅であり、モスクワ南部と都心を結ぶ日常の動脈として機能し続けている。