モスクワ地下鉄ザモスクヴォレツカヤ線の駅。1969年開業の浅層柱式駅で、火の鳥や人魚を象った銅の浮彫パネルが壁面を飾る。
§1 — 概要概要
コロメンスカヤ駅(Коломенская)は、モスクワ地下鉄ザモスクヴォレツカヤ線(2号線)の駅である。1969年、路線の南方延伸の一環として開業した。1960年代の規格化された柱式駅の系譜に連なるが、ロシアの民話的な主題を扱った銅板の装飾を備える点で、量産型のなかにも独自の表情をもつ。駅名は近接するコロメンスコエ(歴代モスクワ大公の離宮で、昇天教会で知られる旧王領)に由来する。
歴史
本駅は、ザモスクヴォレツカヤ線を南へ延ばす工事のなかで建設され、1969年8月11日に開業した。設計はリュボーフィ・シャグリナとヴィクトル・チェリョーミンが担当している。周囲の集合住宅群とほぼ同時期に整備されており、住宅地の拡大と地下鉄延伸が一体で進んだ、ソビエトの都市開発の典型を示す。2022年11月から2023年5月にかけて改修が行われ、柱の被覆や軌道側の壁面が更新された。
建築的特徴
コロメンスカヤは深さ約9メートルの浅層柱三列式駅である。八角形の柱は灰色の大理石で覆われ、床は中央に赤、両側に灰色の花崗岩を敷き分ける。軌道側の壁面は黄色の陶製タイルで仕上げられ、下部に灰色大理石の帯がめぐる。最大の見どころは、彫刻家E・ラディギンによる銅の浮彫パネルである。「祖国はどこから始まるか」を主題とし、火の鳥や人魚、獅子といったロシアの民話・装飾の図像が打ち出されている。規格駅の素っ気なさを、地域的・物語的なモチーフで和らげる試みといえる。
意義・現在
本駅は、経済性を優先した1960年代の柱式駅でありながら、装飾を通じて固有の性格を与えようとした例である。共通化された構造の上に、土地の名(コロメンスコエ)と結びつく民話的図像を載せることで、均質な量産型に物語性を持ち込んでいる。現在もザモスクヴォレツカヤ線の駅として利用されている。