ウィーン技術博物館 Vienna Technical Museum
ウィーンのペンツィングに立つ技術博物館。1908年に皇帝在位60年を機に計画され、歴史主義の堂々たる建物に1918年開館した。鉄道・船舶・航空・産業の歴史的模型を収める。
§1 — 概要概要
ウィーン技術博物館(Technisches Museum Wien)は、オーストリアの首都ウィーン西部のペンツィング、マリアヒルファー通りに面して立つ博物館である。技術・産業・科学の歴史を、とりわけオーストリアの寄与に焦点を当てて展示し、鉄道や造船、航空、産業の歴史的な模型のほか、国内有数の歴史的楽器コレクションを収蔵する。
歴史
1908年、皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の在位60周年を機に、産業と工業のための技術博物館の設立が決まった。シェーンブルン宮殿に近い14区の用地に、歴史主義の建築家エミール・フォン・フェルスターが初期設計をまとめたが、彼は1909年に急逝する。続く設計コンペではオットー・ワーグナーが選ばれたものの、近代芸術に否定的な皇位継承者フランツ・フェルディナント大公がこれを覆し、フェルスター案に近いハンス・シュナイダーの設計を採用させた。1909年6月20日に皇帝が定礎し、建物は1913年に完成したが、開館は第一次世界大戦のために遅れ、1918年5月6日となった。
建築的特徴
堂々たる歴史主義の様式をまとい、左右に翼を広げた対称の構成をとる。設計を主導したフェルスターもシュナイダーもともに歴史主義の建築家であり、当時の前衛であったワーグナーの分離派的な案ではなく、伝統的な意匠が選ばれた点に、世紀転換期ウィーンの力学がうかがえる。ガラスのドームで覆われた明るい中庭が、内部空間の見どころとされる。
意義・現在
近代と歴史主義がせめぎ合った世紀転換期のウィーンにあって、本館はあえて保守的な様式で建てられた建築として、その選択の経緯ごと記憶される。オーストリアの記念物保護の対象であり、1990年代末には大規模な改修を経て体験型の展示を備えた現代的な博物館へと再開館した。開館から一世紀を超えて、いまも同国を代表する科学技術博物館として親しまれている。