歴史主義建築
historicist architecture年代
1800 — 1910
地域
ヨーロッパ
時代
新古典・歴史主義
歴史主義建築(Historicist architecture)は、19世紀の西欧で広まった、過去の様式を意識的に選び取って用いる建築の傾向である。ゴシック、ルネサンス、バロック、古典主義など、それまで歴史のなかで継起してきた様式が、いずれも参照可能な「語彙」として並列に扱われるようになった点に特徴がある。建築家は建物の用途や象徴的な意味に応じて様式を選び、教会には中世のゴシックを、官公庁や銀行には古典の威厳を、邸宅には華やかなネオ・バロックを、というように様式と機能を結びつけた。
その背景には、考古学や美術史の発達によって過去の様式が体系的に整理され、図版を通じて広く共有されたことがある。鉄やガラス、鉄筋コンクリートといった新しい材料・構法が普及する一方で、外観はなお歴史的な様式でまとう、という二重性もしばしば見られた。ゴシック・リヴァイヴァルやネオルネサンス、ネオバロックといった個々のリヴァイヴァルは、この大きな枠組みのなかに位置づけられる。
19世紀後半には複数の様式を一つの建物に折衷する例も増え、様式の自由な選択は、近代建築が「装飾の排除」へ向かう前夜の状況を準備した。シュヴェリーン城のように、フランス・ルネサンスの城館を範としながら巨大な記念碑性を獲得した作例は、この歴史主義の到達点の一つを示している。様式の系譜のうえでは、バロックや新古典主義といった単一様式の規範を相対化し、やがて装飾を捨て去るモダニズムへと至る、長い過渡の局面に位置づけられる。
§1
代表建築
Buildings§2