ドイツ・ドルトムントのサッカー専用スタジアム。ボルシア・ドルトムントの本拠地で、欧州最大の立見席「黄色い壁」と、外周にそびえる黄色いパイロンで知られる。
§1 — 概要概要
ヴェストファーレンシュタディオン(Westfalenstadion、命名権により2005年からジグナル・イドゥナ・パルク)は、ドイツ西部の都市ドルトムントに立つサッカー専用スタジアムである。名門ボルシア・ドルトムントの本拠地で、ドイツ最大の収容人員(リーグ戦時で約八万一千人)を誇る。最大の見どころは、南側に広がる立見専用の巨大スタンド「南スタンド(Südtribüne)」、通称「黄色い壁(Die Gelbe Wand)」である。約二万五千人が立ち並ぶ欧州最大の立見席で、ドルトムントの熱狂的な応援を象徴する。
歴史
ボルシア・ドルトムントはもともと近隣のシュタディオン・ローテ・エルデを本拠としていたが、1966年の欧州カップ制覇で観客が急増し、手狭となっていた。市には新スタジアムを建設する資力がなかったが、1974年のFIFAワールドカップでケルンが開催を辞退したため、その代替都市としてドルトムントが選ばれ、建設の道が開けた。1971年から1974年にかけ、当時としては安価なプレファブ工法によって収容五万四千人の競技場が建てられ、1974年4月に開場した。その後スタジアムは段階的に拡張され、1990年代後半に各スタンドへ上層階が増設され、南スタンドは現在の巨大な立見席となった。2002年から2003年の第三次拡張では、開いていた四隅が塞がれ、外周に立つ鮮やかな黄色の鋼製パイロンが設けられて、現在の姿が整った。
建築的特徴
当初の1974年の競技場は、ワールドカップに間に合わせるべくプレファブ部材で手早く組まれた簡素な楕円形のボウルであった。今日の象徴的な姿は、度重なる拡張の積層によって生まれている。とりわけ外部に露出した八本の黄色いパイロンは、屋根の荷重を外周から吊り下げる構造材であると同時に、市内各所から望める標識(ランドマーク)としても働く。スタンドはピッチに近接して急勾配で立ち上がり、観客と選手の距離が近い。屋根に覆われた立見席が生む音響と一体感は、このスタジアムの設計思想を端的に表している。
意義・現在
ヴェストファーレンシュタディオンは、1974年と2006年のFIFAワールドカップ、2024年のUEFA欧州選手権など数々の国際大会の舞台となってきた。とりわけ「黄色い壁」が生む雰囲気は世界屈指と評され、スタジアムそのものがドルトムントという都市の文化的アイデンティティの一部となっている。建築としては突出した様式をもたないが、観客体験を最優先に積み上げられたその姿は、現代のフットボール・スタジアムが何を大切にしてきたかを示す好例である。