中国湖南省の張家界大峡谷に架かる、ガラス床の歩行者用吊橋。イスラエルの建築家ハイム・ドタンの設計で2016年に開通し、開通時は世界最長・最高所のガラス床橋とされた。全長430メートル。
§1 — 概要概要
張家界大峡谷ガラス橋(张家界大峡谷玻璃桥、別称「云天渡」)は、中国湖南省の張家界大峡谷に架かる歩行者専用の吊橋である。床面の大部分が透明なガラスで構成され、谷底まで約300メートルの高さを足元に見下ろしながら渡ることができる。全長430メートル、幅は端部の15メートルから中央の6メートルへと絞り込まれる。2016年の開通時には、世界で最も高所に架かり、かつ最も長いガラス床橋とされた。
歴史
橋はイスラエルの建築家ハイム・ドタンが設計し、中国の橋梁技術者と協働して建設された。工事は2014年ごろに始まり、両岸の主塔とアンカレッジの構築を経て、2016年6月に完成した。一般公開は同年8月20日に試験運用として始まったが、想定をはるかに超える来訪者が殺到し、わずか13日後に、予約制の整備や駐車場拡張などのため一時閉鎖された。改善を経て再開し、その後は中国各地で同種のガラス橋が相次いで建設される契機ともなった。なお橋が架かるのは慈利県の大峡谷であり、奇岩で知られる世界遺産・武陵源(張家界国家森林公園)とは別の渓谷にあたる。
建築的特徴
構造はガラス床をもつ中規模の吊橋で、両岸に立つ主塔から張られたケーブルが床版を支える。ドタンは「雲に消える、できるだけ見えない白い橋」を設計意図に掲げ、自然のなかに橋を溶け込ませることを目指した。その理念を実現するため、鋼製の桁はわずか0.6メートルの高さに抑えられ、支間と桁高の比は625に達した。床版には120枚を超えるガラスパネルが用いられている。中央部には、開通時点で世界最高所とされたバンジージャンプの設備も組み込まれた。
意義・現在
張家界大峡谷ガラス橋は、観光を主目的として構想された現代の橋梁であり、透明な床がもたらす視覚的な高度感そのものを体験の中心に据えている。その人気は中国各地に多数のガラス橋を生む引き金となった一方、過密な来訪者数や安全性をめぐる議論も呼んだ。建築と観光、土木技術と興行が交差する、21世紀の観光建築の一典型である。