仏教建築
清水寺
京都・東山の音羽山中腹に伽藍を構える北法相宗の大本山。778年の創建を伝え、国宝…
懸造(かけづくり)は、崖地や急斜面に長い柱と貫を組んで床を水平に張り出し、その上に堂を建てる日本の建築形式である。舞台造とも呼ばれる。平坦地を造成して建物を載せるのではなく、地形をそのまま残したまま構造で高さを補うという発想に立つ。斜面に沿って長さの異なる柱を立て、横方向の貫で幾重にも縦横に緊結して立体的な格子を組み、その頂部に土台と床組を渡す。柱は必要に応じて十数メートルに達し、継手と楔によって固められる。地震や風による水平力は、貫と柱の接合部に生じる摩擦と木材のわずかな変形が吸収する。剛強に固めるのではなく、動きを許して逃がす木造の軸組の論理が、極端な条件のもとで表れた形といえる。この形式が発達した背景には、山中の霊地に堂を営むという信仰上の要請がある。観音は補陀落山という海上の山に現れるとする経説にちなみ、観音を本尊とする寺院ではしばしば崖の上に本堂が構えられた。京都の清水寺、奈良の長谷寺、滋賀の石山寺の本堂はいずれも懸造であり、いずれも観音の霊場である。鳥取の三仏寺投入堂のように、人が容易に近づけない岩壁の窪みに架けられた修験の堂もある。参詣者は堂に上がることで地面から切り離され、眼下に山と町を望む。懸造は構造上の解決であると同時に、俗世からの隔たりを身体に経験させる装置でもあった。床下の架構は隠されず、斜面の下から見上げれば柱と貫の網目がそのまま外観をなす。堂本体と支持構造とが視覚的に分離するこの見え方も、懸造が強い印象を残す理由の一つである。