神明造
Shinmei-zukuri神明造(しんめいづくり)は、伊勢神宮の正殿に代表される神社本殿の形式である。切妻屋根の平入、すなわち棟と平行な長辺の側に入口を設ける建物で、屋根に反りを付けず、全体を直線で構成する。出雲大社に代表される大社造、住吉大社の住吉造とともに、仏教建築の影響を受ける以前の古い姿を伝える形式とされる。
起源は弥生時代の高床倉庫に求められることが多く、穀物を納める倉の形が神の宿る建物へ転じたとする見方が有力である。弥生時代の銅鐸に描かれた絵や古墳時代の家形埴輪にも、似た構成の建物が見える。形式が整えられたのは伊勢神宮においてで、7世紀末に始まったとされる式年遷宮によって、正殿は20年ごとに同じ形で建て替えられてきた。
形態の要点は次のとおりである。柱は円柱で、伊勢では礎石を用いずに地中へ直接埋める掘立柱とする。床を高く張り、周囲に縁と高欄を巡らせる。屋根は萱葺・檜皮葺・銅板葺などの切妻で、破風板がそのまま屋根の上へ延びて交差し、千木となる。棟の上には円筒形の鰹木を並べる。妻側の壁の外には、棟木を直接支える棟持柱が立つ。彩色や彫刻はほとんど施さず、白木の素地を見せる。
伊勢神宮の正殿の形式は、とくに唯一神明造と呼ばれて区別され、壁から離れて立つ独立棟持柱や、千木の先端に開けた風穴などに固有の特徴を持つ。各地の神社に見られる神明造の多くは、伊勢の形式を簡略にしたもので、棟持柱を省いたり、礎石の上に柱を立てたり、正面に向拝を付け加えたりする。東京の靖国神社本殿(1872年)は、正面に向拝を付けた近代の大規模な神明造の例である。
屋根に反りを持ち、前方へ庇を長く延ばした流造が平安時代以降に全国で最も広く普及したのに対し、神明造は直線と白木による簡素な構成を保ち続けた。大陸から伝わった寺院建築が組物や彩色で装飾を重ねたのとは対照的に、神明造は日本建築のなかで、在来の建築観を最も純粋に伝える形式の一つとして位置づけられている。