奈良県斑鳩、聖徳太子ゆかりの仏教寺院。607年の創建で、金堂・五重塔など西院伽藍…
天照大御神を祀る日本の神社の中心。神明造の社殿を20年ごとに造り替える式年遷宮により、古代の建築様式が現代まで更新され続けている。
§1 — 概要伊勢神宮(正式には単に「神宮」)は、三重県伊勢市に鎮座する神社である。天照大御神を祀る皇大神宮(内宮)と豊受大御神を祀る豊受大神宮(外宮)の二つの正宮を中心に、別宮・摂社などを含む125の社宮の総称である。社殿を20年ごとに造り替える式年遷宮によって、古代の建築様式が「更新」というかたちで現代まで生き続けている点で、世界の建築史に類例の少ない存在である。
記録によれば、式年遷宮は飛鳥時代の天武天皇が定め、持統天皇4年(690年)に第1回が行われた。戦国期には120年を超える中断もあったが制度は再興され、2013年の第62回まで、およそ1300年にわたって続いている。多くの神社が瓦屋根や朱塗りへと姿を変えていくなかで、伊勢の社殿は仏教建築の渡来以前に遡る形式を保ち続けた。
正宮の社殿は神明造——弥生時代の高床倉庫を起源とすると言われる、日本の最古層の建築形式である。掘立柱、反りを持たない直線的な切妻屋根、萱葺、棟に載る千木と鰹木。礎石も彩色も用いない簡素な構成は、造替を前提とするからこそ保たれてきた。正宮の隣には同じ広さの敷地(古殿地)が用意され、遷宮のたびに社殿は隣地へ建て替えられる。造り替えの対象は殿舎にとどまらず装束・神宝にまで及び、材料の調達から工匠の技までが20年周期で次の世代へ継承される。
石の建築が素材の永遠を目指すのに対し、伊勢は更新の永遠を選んだ。建物は新しくとも様式は古代のまま——この逆説は、オリジナルとは何かという保存の根本問題を建築史に突きつけてきた。現在の社殿は2013年の第62回式年遷宮によるもので、次回は2033年に予定されている。正宮は幾重の垣に囲われ、参拝者は垣の外から拝する。