新古典主義
新古典主義は、18世紀半ばから19世紀前半にかけて西欧を中心に広がった建築・美術の様式である。バロックやロココの過剰な装飾と劇的な空間表現に対する反動として生まれ、古代ギリシア・ローマの建築を規範とする明晰さと秩序への回帰をめざした。ヘルクラネウムやポンペイの発掘によって古代世界への関心が高まり、考古学的な正確さをともなって古典の語彙が見直されたことが、その思想的な背景にある。
形態の特徴は、列柱・ペディメント・ドームといった古典的要素を、明快な幾何学と左右対称の構成のなかに配することにある。壁面は平滑に整えられ、装飾は抑制され、量塊の単純さと比例の調和が重んじられた。理念を突きつめた建築家のなかには、球や立方体といった純粋幾何学そのものを記念碑とする幻想的な構想を描いた者もいた。
イギリスやアメリカでは、アンドレーア・パッラーディオの理論を介して受容され、邸宅から官公庁・議事堂に至る公共建築の規範として広く用いられた。代表例としては、パリのパンテオン(サント・ジュヌヴィエーヴ聖堂)、ベルリンやサンクトペテルブルクの公共建築、アメリカ合衆国の連邦議会議事堂などが挙げられる。新古典主義は、やがて各地の歴史的様式を選択的に用いる歴史主義へと連なり、ゴシック・リヴァイヴァルと並んで「様式を選ぶ」という近代特有の自意識を準備した点でも重要である。古代の権威を借りて理性と公共性を表す言語として、その影響は19世紀を通じて長く残った。