ジョージアン様式
パッラーディオ建築(Palladian architecture)は、16世紀イタリア・ヴェネト地方の建築家アンドレーア・パッラーディオ(1508–1580)の作品と理論に由来する古典主義建築の一系譜である。パッラーディオは古代ローマの遺構とウィトルウィウスの建築理論を徹底して研究し、左右対称の明快な構成、人体や音楽の調和になぞらえた整数比による比例体系、そして古代神殿に倣ったポルティコ(列柱玄関)を、教会や邸宅といった近世の建築に応用した。その設計思想は、ヴェネト各地に点在するヴィラ(別荘)群や、主著『建築四書』(1570年)に結実し、精密な図版を通じてヨーロッパ全域へ伝播した。とりわけイギリスでは、17世紀にイニゴー・ジョーンズがいち早く導入し、18世紀にはバーリントン卿らを中心に貴族の邸宅建築を席巻する「パッラーディアニズム」として一大潮流をなした。さらに大西洋を越えてアメリカにも及び、トマス・ジェファソンによるヴァージニア大学やモンティチェロの設計を通じて、建国期合衆国の公共建築の規範ともなった。形態の面では、切妻屋根を戴く神殿風のポルティコ、中央を強調した対称の立面、そしてしばしば中央広間を頂くドームやセルリアーナ(パッラーディオ窓)と呼ばれる三連アーチの開口を特徴とし、簡潔で端正な装飾を旨とする。バロックの劇的な動勢とは対照的に、静謐で測定可能な秩序を重んじる点にその本質がある。建築を「読み書きできる規範」として体系化したこの明晰な古典言語は、図版集を介して国境を越えて広まり、18世紀後半に興る新古典主義建築の最も重要な源流の一つに数えられている。