シカゴ中心部レイクショア・イーストに建つ82階・高さ262メートルの複合用途超高層。ジーン・ギャング率いるスタジオ・ギャングが設計し、波打つバルコニーが水面を思わせる外観を生む。竣工当時、女性が設計した世界最高層であった。
§1 — 概要概要
アクア(Aqua)は、アメリカ・イリノイ州シカゴの都心部、ミシガン湖に面した再開発地区レイクショア・イーストに建つ高さ262メートル・82階建ての複合用途超高層建築である。ジーン・ギャング(Jeanne Gang)率いるスタジオ・ギャングが設計した。各階で輪郭を変えながら張り出すバルコニーが建物全体を覆い、湖面の波紋や地層の等高線を思わせる起伏した外観をつくり出している点で広く知られる。
歴史
計画はシカゴの再開発事業の一環として2000年代半ばに始まり、2007年に着工、2009年に竣工した。ホテル・賃貸住宅・分譲住宅・商業施設を一棟に収める複合用途として構想され、低層部にホテル、中層部に賃貸住戸、高層部に分譲住戸が積層する。実施設計はローウェンバーグ・アンド・アソシエイツのジェームズ・ローウェンバーグが担い、意匠はギャングが主導した。竣工時点で、女性建築家が設計した建築物としては世界で最も高く、この記録は2020年に、同じギャングが設計した隣接のセント・レジス・シカゴへと更新された。
建築的特徴
構造体は鉄筋コンクリート造で、外観上の最大の特徴は階ごとに輪郭を変えるコンクリート床スラブ=バルコニーにある。スラブの先端は最大で数メートル外側へ張り出し、その出の大小が連続して変化することで、平滑なカーテンウォールの塔とは異なる、彫塑的で流動的な表情が生まれる。この張り出しは造形上の効果にとどまらず、眺望の確保、日射の遮蔽、強風の攪乱といった環境性能上の役割も担う。夏季の日射取得を抑える反射コーティングを施したガラスを併用し、環境性能の認証を取得している。
意義・現在
アクアは、超高層の外皮を均質なガラス幕で覆うのが主流であった時代に、床スラブの操作という比較的単純な手法で建物全体に表情を与えてみせた点で注目を集めた。スタジオ・ギャングとジーン・ギャングの名を国際的に知らしめた出世作であり、現在もホテル「ラディソン・ブル・アクア」(2011年開業)を含む複合施設として使われている。隣接して建つより高層のセント・レジス・シカゴと並び、シカゴのウォーターフロントを特徴づける一群を成している。