バイネッキー稀書・写本ライブラリー Beinecke Rare Book & Manuscript Library
米コネチカット州ニューヘイブン、イェール大学の稀覯書・写本図書館。ゴードン・バンシャフト(SOM)の設計で1963年に完成。半透明の大理石パネルが外光を濾し、書架を陽光から守る無窓の宝石箱として知られる。
§1 — 概要概要
バイネッキー稀書・写本ライブラリー(Beinecke Rare Book & Manuscript Library)は、米コネチカット州ニューヘイブンにあるイェール大学の稀覯書・写本専門図書館である。1963年、バイネッキー家の寄贈によって開館した。稀覯書と手稿を収める施設としては世界最大級の規模をもち、グーテンベルク聖書やヴォイニッチ手稿などの貴重資料を所蔵する。設計は、戦後アメリカのモダニズムを代表する建築家ゴードン・バンシャフトが率いるスキッドモア・オーイングス・アンド・メリル(SOM)が手がけた。
歴史
建設は1961年から1963年にかけて行われ、イェール大学のヒューイット・クアドラングルに据えられた。資料保存という用途は、直射日光や温湿度の管理という厳しい条件を建築に課す。バンシャフトはこの要求を、外壁を窓のない大理石の箱とすることで解決した。完成後も米国を代表するモダニズム建築として知られ、2015年から2016年にかけては、空調設備の更新と展示・教育機能の拡張を目的とする大規模改修のため、18か月にわたって閉館した。
建築的特徴
外観は、四隅の柱で持ち上げられた格子状の躯体に、半透明のヴァーモント産大理石パネルをはめ込んだ直方体である。薄く挽いて磨かれた大理石は、外からは堅牢な石の壁に見えるが、内部からは外光をやわらかく濾過する乳白色のスクリーンとして働く。直射日光を避けながら室内に均質な光を導く、この「光る石の箱」が建物の核心をなす。中央には、ガラスで囲まれた六層分の書架塔がそびえ、貴重書のコレクションそのものが可視化されたモニュメントとして展示される。荷重は四隅の支点に集約され、外壁の大理石は構造的な役割から解放されて純粋な被膜となっている。
意義・現在
無装飾の幾何学と素材そのものの表情によって空間を語るこの建物は、戦後アメリカのモダニズムが到達した一つの完成形といえる。資料保存という機能と、知の宝庫という象徴とを一つの形式で結んだ点で高く評価され、現在もイェール大学の研究図書館として現役で運用されている。中央の書架塔は、訪れる者にコレクションの規模を一望させる装置として、いまも機能し続けている。