バクー近郊のカスピ海沿いに建つモスク。13世紀にシルヴァンシャー朝の命で創建されたが1936年にソ連により破壊され、現在の建物は原型を範として1990年代に再建された、シルヴァン=アブシェロン建築学派の作である。
§1 — 概要概要
ビビヘイバット・モスク(Bibiheybət məscidi)は、アゼルバイジャンの首都バクー近郊、ビビヘイバット村のカスピ海沿いに建つモスクである。13世紀にこの地の聖女の墓廟として創建された歴史をもつが、現在の建物は20世紀末に原型を範として建て直されたものである。地域の中世建築の系譜を今に伝える、シルヴァン=アブシェロン建築学派の代表的な作例に数えられる。
歴史
最初のモスクは、シルヴァンシャー朝のファッルフザード2世の命により13世紀末に建立され、建築家マフムード・イブン・サアドが手がけたと伝えられる。預言者ムハンマドの後裔にあたる女性の墓廟を中心とし、以後長く巡礼の地として崇敬を集めた。しかし1936年、反宗教政策をとったソヴィエト政権によって、古いモスクは完全に破壊された。独立後の1990年代、アゼルバイジャン政府のもとで再建が進められ、旧来の姿を範としつつ規模を拡大した現在のモスクが築かれた。増築を含む整備は2000年代まで続けられている。
建築的特徴
現在のモスクは、三つのドームと二本のミナレットを備え、白と黒の石を組み合わせた外観をもつ。内部は男女別の礼拝室に分かれ、壁面は幾何学文様や書(カリグラフィー)、鏡細工で装飾される。全体の構成は、尖頭アーチや彫りの深い石造装飾を特徴とするイスラーム建築の地域様式、すなわちシルヴァン=アブシェロン建築学派の手法を踏まえている。破壊前の姿をそのまま写したというより、歴史的な語彙を用いて新たに構成された再建建築である点に留意が必要である。
意義・現在
ビビヘイバット・モスクは、破壊された宗教建築が独立後の国民的記憶のなかで再興された事例として知られる。アゼルバイジャンを代表するモスクのひとつであり、宗教施設として、また巡礼と観光の場として日々多くの人を集めている。カスピ海を望む立地とあわせ、バクー近郊の象徴的な景観を形づくっている。
関連する建築
Related※ アゼルバイジャンにはパノラマの自由が及ばないため、現存建築の写真の利用には制約がある場合がある。