グルベンキアン美術館 Calouste Gulbenkian Museum
リスボンにある、石油事業で財を成したアルメニア系の実業家カルースト・グルベンキアンの個人コレクションを収める美術館。アトーギア、シッド、ペソアの三建築家が設計し、1969年に開館した、ポルトガル近代建築の到達点。
§1 — 概要概要
カルースト・グルベンキアン美術館(Museu Calouste Gulbenkian)は、ポルトガルの首都リスボンにある美術館。アルメニア系でポルトガルに居を構えた石油実業家カルースト・グルベンキアン(1869–1955)が遺した美術コレクションを収蔵・公開するために建てられた。古代エジプトから20世紀初頭に及ぶ絵画・工芸・装飾美術を所蔵し、レンブラントやモネ、ルネ・ラリックの宝飾などで知られる。
歴史
グルベンキアンは自らの遺志により収集した美術品をポルトガルに遺贈し、1956年にカルースト・グルベンキアン財団が設立された。財団本部と美術館の建設は、1959–60年の指名設計競技で選ばれたルイ・ジェルヴィス・ダトゥギア、ペドロ・シッド、アルベルト・ペソアの三建築家の案に基づく。建設は1962年に始まり、創設者の生誕100年にあたる1969年10月に開館した。建物群は2010年、ポルトガルで初めて近代建築として国家遺産(Monumento Nacional)に指定された。
建築的特徴
美術館は、水平に長い直方体を基調とし、鉄筋コンクリートと花崗岩、ガラスを抑制的に用いた構成をとる。装飾を排し、素材そのものの質感で落ち着いた表情をつくる点に、1960年代ポルトガル近代建築の特質がよく表れている。内部は二つの中庭を囲んで展示室が配され、大きなガラス面を通じて緑の庭園と展示空間が連続する。建物全体は7.5ヘクタールの庭園のなかに低く伏せられ、屋根は庭の延長としての段状のテラスとして設計されている。
意義・現在
本館は、規範的な国際様式に対し、自然との関係や素材の扱いに独自の解を示した戦後ポルトガル近代建築の代表作として高く評価されている。財団は美術館のほか管弦楽団・合唱団や科学研究機関を擁し、リスボンの文化活動の中心をなす。美術館は改修のため一時休館しており、2026年7月の再開が予定されている。