プラハのヴルタヴァ(モルダウ)川に架かる石造橋。1357年、神聖ローマ皇帝カール4世の発意で着工し、棟梁ペトル・パルレーシュが建設を主導した。橋上に並ぶバロックの聖人像でも名高い。
§1 — 概要概要
カレル橋(Karlův most)は、チェコの首都プラハで、ヴルタヴァ(独名モルダウ)川に架かる石造の橋である。1357年、神聖ローマ皇帝にして当時のボヘミア王カール4世の発意により着工され、旧市街とプラハ城のある城下地区(マラー・ストラナ)を結んだ。ゴシックの堅牢な構造に、17〜18世紀に加えられたバロックの聖人像の列が重なり、中世とバロックの時間が積層した中欧を代表する橋である。
歴史
それ以前にこの地に架かっていたユディト橋が1342年の洪水で流失したため、カール4世は新たな石橋の建設を命じた。1357年7月、皇帝自ら定礎したと伝えられ、建設はカール4世が重用した棟梁ペトル・パルレーシュ(プラハの聖ヴィート大聖堂も手がけた)に委ねられた。橋は1402年ごろに完成した。両端と中央には防御を兼ねた橋塔が築かれ、旧市街側の橋塔はパルレーシュの設計になるゴシック建築の傑作として知られる。橋上に立ち並ぶ30体ほどの聖人像の多くは、後のバロック期(おおむね1683年以降)に順次設置されたもので、現在見られる像の多くは複製であり、原作は博物館等に保管されている。
建築的特徴
カレル橋は、16のアーチによってヴルタヴァ川を渡る、全長およそ516メートル・幅約10メートルの石橋である。砂岩のブロックを積んだ堅牢な橋脚は、たびたびの洪水に抗うべく流れに対して角度をつけて配され、上流側には氷塊や流木を逃がす工夫が施された。橋そのものはゴシックの構造をもつ一方、橋を彩る聖人像群はバロック彫刻の野外美術館とも呼べる豊かさをもち、マティアス・ブラウンやフェルディナント・ブロコフら当代の彫刻家の手になる。建築としての骨格と、後世が重ねた彫刻の層とが一体の景観を成している点に、この橋の独特の性格がある。
意義・現在
カレル橋は、6世紀以上にわたりプラハの両岸を結び続けてきた都市の動脈であり、街の象徴である。世界遺産「プラハ歴史地区」(1992年登録)の登録範囲に含まれ、チェコの国定文化財でもある。幾度もの洪水による損傷と修復を経て、現在は歩行者専用として常に多くの人々が行き交う。中世の土木技術と、その上に咲いたバロック彫刻が共存する稀有な構築物として、今日も中欧でもっとも知られた橋であり続けている。