モスクワ地下鉄の駅。1987年に開業した深さ62メートルのパイロン式駅で、作家アントン・チェーホフに因んで名づけられ、開業から数年はモスクワ地下鉄で最も深い駅であった。
§1 — 概要概要
チェーホフスカヤ駅(Чеховская)は、モスクワ地下鉄セルプホフスコ=チミリャーゼフスカヤ線の駅である。同線はモスクワを南北に貫く幹線で、本駅はその中心部の結節点に位置する。地表のコンコースはプーシキン広場に置かれ、駅名は近代ロシアを代表する作家アントン・チェーホフに由来する。1987年の開業当時、深さ62メートルはモスクワ地下鉄で最も深く、その記録は1991年まで保たれた。
歴史
駅は1987年12月31日、ソ連時代の末期に開業した。開業からおよそ一年間は同線の北の終端として機能し、後に路線が北へ延伸された。設計はヴィクトル・チェリョーミンとアレクサンドル・ヴィグドロフが手がけた。これほど深い位置に設けられたのは、既設の二路線——ザモスクヴォレツカヤ線のトヴェルスカヤ駅、タガンスコ=クラスノプレスネンスカヤ線のプーシキンスカヤ駅——と地下で結節し、乗換拠点を成立させるためである。
建築的特徴
構造は、深層駅に多いパイロン式を採る。中央のホールと両側のプラットフォームを、太い橋脚(パイロン)が連続して支える三廊形式である。内装は白を基調とする大理石で簡潔にまとめられ、装飾を抑えた1980年代ソ連の駅建築の特徴をよく示す。豪奢な意匠で名高いスターリン期の諸駅とは対照的に、明快さと機能を旨とした空間構成である。
意義・現在
チェーホフスカヤ駅は、三路線が交わるモスクワ中心部の主要な乗換拠点の一つである。三駅は地下で互いに結ばれ、市内有数の結節点を成す。装飾を競ったスターリン期から、機能性を前面に出す後期ソ連へ——モスクワ地下鉄の様式的な変遷を、簡潔な白い地下空間として示す一例となっている。