イングランド・チェスターに建つ大聖堂。1093年に創建された聖ウェルブルク・ベネディクト会修道院に始まり、ノルマンからゴシック、垂直式まで、英国中世建築のあらゆる様式を伝える。赤砂岩の建物で、19世紀にG.G.スコットが大修復した。
§1 — 概要概要
チェスター大聖堂(Chester Cathedral)は、イングランド北西部、チェシャー州の都市チェスターに建つ、イングランド国教会チェスター主教区の大聖堂である。もとは聖ウェルブルクに捧げられたベネディクト会修道院の聖堂であった。地元の赤砂岩で築かれ、ノルマン様式から初期イングランド式・装飾式・垂直式に至るまで、イングランド中世建築のあらゆる様式を一棟のうちに伝える点で知られる。グレードI(第一級)の指定建造物である。
歴史
この地では、ローマ時代以来キリスト教の礼拝が行われてきたとされる。10世紀には聖ウェルブルクの聖遺物が納められた。1093年、チェスター伯ヒュー(「ルパス」=狼)が、ベック修道院のアンセルムスらの助けを得て、ここをベネディクト会修道院とした。ノルマンの修道士たちは半円アーチを特徴とするロマネスクの聖堂を築き、その遺構は北西の塔や北翼廊に今も見られる。13世紀から14世紀にかけては、東端の聖母礼拝堂を皮切りに、ゴシック様式で大規模に建て替えられた。15世紀末から16世紀には、中央塔や南翼廊、大きな西窓などが垂直式で加えられたが、修道院解散の時を迎えて未完に終わった。1538年、ヘンリー8世の修道院解散により修道院は閉じられ、1541年、聖ウェルブルク修道院聖堂は国教会の大聖堂へと改められた。
建築的特徴
建物は、もろく風化しやすい地元の赤砂岩で築かれており、内部は温かみのある淡紅色を帯びる。最古のノルマン部分(北西塔・北翼廊)の重厚な半円アーチに対し、13世紀の聖母礼拝堂は簡素な尖頭窓をもつ初期イングランド式、内陣は装飾式、中央塔や西窓は垂直式と、各時代の様式が連なる。14世紀の内陣の木彫座席(クワイア・ストール)は、ミゼリコードや天蓋に施された精緻な彫刻で名高い。19世紀には、激しく風化した外装が、ゴシック・リヴァイヴァルの建築家ジョージ・ギルバート・スコットによってほぼ全面的に張り替えられ、塔に小塔や胸壁が加えられた。現在の外観は、この大修復に負うところが大きい。
意義・現在
チェスター大聖堂は、英国中世建築の見本帳ともいえる存在であり、修道院から大聖堂へ、そして近代の修復を経て今日に至る、長い歴史の層を一棟のうちに示している。スコットらの大修復は、その手法をめぐって「修復か建て替えか」という論争を呼び、古建築物の保護をめぐる近代的な議論を促す一因ともなった。現在も主教区の中心として礼拝が営まれるとともに、多くの来訪者を迎えている。
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