アトランティーダの教会 Church of Cristo Obrero y Nuestra Señora de Lourdes
ウルグアイの技師エラディオ・ディエステの代表作。柱も梁もなく、波打つ煉瓦の壁と薄い殻の屋根だけで構成された教会で、安価な在来素材を構造美へ高めた20世紀の傑作として世界遺産に登録されている。
§1 — 概要概要
クリスト・オブレロ(労働者キリスト)とルルドの聖母の教会は、ウルグアイ南部カネロネス県のアトランティーダ近郊に立つカトリック聖堂である。技師エラディオ・ディエステが設計し、波打つ煉瓦の壁と薄い曲面屋根だけで内部空間を成立させた。柱も梁も用いず、見えがかりの煉瓦のみで構築されたこの建築は、2021年にユネスコ世界遺産へ登録された。
歴史
ディエステは1952年から構想に着手し、工事を経て1960年に完成させた。観光地の保養客のためではなく、その経済を底辺で支える労働者と農民の集落のための教会として計画された点に、技師の社会的な眼差しが表れている。内部には彫刻家エドゥアルド・ディアス・イェペスによる木彫のキリスト像と、緑色花崗岩の粗いブロックを据えた祭壇が置かれる。
建築的特徴
構造の核心は、ディエステが「セラミカ・アルマダ(鉄筋煉瓦)」と名づけた独自の構法にある。焼成煉瓦の目地に鉄筋を仕込み、鉄筋コンクリートの論理を煉瓦に移し替えることで、ごく薄い殻に大きな耐力をもたせた。幅16メートル・奥行30メートルの単一の身廊では、高さ7メートルの側壁が円錐曲線を描いて立ち上がり、平面では波打つ二重曲率をなすことで、控え壁を用いずに自立する。屋根は二方向に湾曲するガウス・ヴォールトとして波打つ。隣接して立つ高さ15メートルの塔は、煉瓦を透かし積みにした壁をもち、光を漉して内部へ導く。倉庫並みの工費でありながら、煉瓦の表現力を極限まで引き出した構築である。
意義・現在
この教会は、国際様式の既製の解法に背を向け、地域の素材と職人技から独自の構造形態を導いた点で高く評価される。「健全な建築は、材料の合理的で経済的な使用なしには生まれない」というディエステの信条を体現する到達点であり、1998年にはスペインのトレホン・デ・アルドスにその縮小版が建てられたほか、国際的な保存研究の対象ともなってきた。現在もアトランティーダの集落に祈りの場として息づいている。