名築が収録する公開済みの建物のうち、テレビ・ラジオの送信や無線通信のために建てられ、あるいは使われてきた塔を13件選んだ。1889年のエッフェル塔から2012年…
アラブ首長国連邦のドバイで建設が進む、サンティアゴ・カラトラバ設計の展望塔。百合の花とイスラムの尖塔(ミナレット)に着想した、ケーブルで支える細い塔である。2016年に着工し、当初はブルジュ・ハリーファを上回る高さがめざされた。中断と設計変更をへて、近年ふたたび工事が動き出している。
§1 — 概要アラブ首長国連邦のドバイ、運河沿いの新開発地区「ドバイ・クリーク・ハーバー」に建設が進められている展望塔である。建築家サンティアゴ・カラトラバの設計による。百合の花と、イスラムの尖塔ミナレットに着想した、ケーブルで支えられる細い塔で、頂部のつぼみのなかに、いくつもの展望デッキを擁する計画である。本稿執筆の時点では、なお建設の途上にある。
塔は、ドバイ・クリーク・ハーバーの象徴として、開発主体エマール社により計画された。2016年、六つの設計案のなかからカラトラバの案が選ばれ、同年着工した。当初は、世界一の高さを誇るブルジュ・ハリーファを上回り、世界で最も高い塔となることがめざされた。
しかし2018年に基礎を終えたのち、2020年のコロナ禍を機に工事は中断する。その後、計画は見直された。2024年、エマール社は、高さをブルジュ・ハリーファより低く抑えつつ、建築としての美しさを重んじる方向への設計変更を発表し、工事を再開した。高さの競争よりも、街の象徴としての価値が重んじられるようになっている。
塔の中心は、上にいくほど細くなる、ほっそりとしたコンクリートの軸である。これを、地面に張られた多数のケーブルが支える。その姿は、茎から伸びる百合の葉脈にもたとえられる。頂部には、卵形にふくらんだ「つぼみ」が載り、そのなかに、四方を見わたす展望室や、空中の庭園が設けられる計画である。夜には、頂が光の標となるよう構想されている。
ドバイ・クリーク・タワーは、技術を美へと昇華させるカラトラバの志向と、絶えず高さを更新してきたドバイの野心とが、出会った建築である。世界一の高さという当初の夢は退いたものの、街の新しい象徴をめざす計画として、なお進行している。完成すれば、ドバイの新たな水辺の中心となるはずである。
名築が収録する公開済みの建物のうち、テレビ・ラジオの送信や無線通信のために建てられ、あるいは使われてきた塔を13件選んだ。1889年のエッフェル塔から2012年…