カナリア諸島サンタ・クルス・デ・テネリフェの臨海に建つコンサートホール。サンティアゴ・カラトラバの設計で2003年に完成し、空へ反り上がる白い大屋根が街の象徴となった現代スペインを代表する建築である。
§1 — 概要概要
アウディトリオ・デ・テネリフェ(Auditorio de Tenerife、正式名称「アダン・マルティン」)は、スペイン領カナリア諸島、テネリフェ島のサンタ・クルス・デ・テネリフェにあるコンサートホールである。大西洋に面した港の一角に建ち、スペインの建築家サンティアゴ・カラトラバの設計で2003年に完成した。空へ向かって大きく反り返る白い屋根が街と島の象徴となり、現代スペイン建築を代表する一作に数えられる。
歴史
島に本格的な音楽ホールをという構想は古く、計画自体は20世紀後半から進められていた。最終的にカラトラバの案が採用され、1997年に着工、2003年に竣工した。同年9月26日に落成式が行われ、以後はテネリフェ交響楽団の本拠として、オペラやコンサートの拠点となっている。完成後まもなく街を代表するランドマークとなり、切手や記念硬貨の意匠にも採り上げられた。
建築的特徴
建物の核心は、頂部で大きく弧を描いて前方へ突き出す巨大な殻状の屋根である。基部から立ち上がった曲面がカンチレバー(片持ち)で宙に伸び、波頭や鳥の翼にもたとえられる動きをつくり出す。白いコンクリートの構造体は砕いた淡色のセラミックタイル(トレンカディス)で覆われ、強い陽光の下で純白に輝く。
カラトラバはもともと構造家でもあり、力の流れをそのまま造形へ翻訳する手法で知られる。ここでも、客席を包む卵形のホールと、それを覆う反り上がる外殻という二重の構成が、構造と彫刻を一体化させている。設備や構造を露わにしながら有機的な曲線へ昇華させる姿勢は、20世紀末の後期モダニズム、あるいは構造表現主義の系譜に位置づけられる。
意義・現在
アウディトリオ・デ・テネリフェは、一個の文化施設が都市のアイデンティティそのものになりうることを示した好例である。海へ向かって翼を広げるその姿は、観光のシンボルであると同時に、構造の論理から造形を導くカラトラバの作風を最も鮮やかに体現する。現在も島の音楽文化の中心として、活発に用いられている。