表現主義建築
expressionist architecture年代
1910 — 1925
地域
ドイツを中心にオランダ・北欧など
時代
近代モダニズム
表現主義建築(expressionist architecture)は、20世紀初頭のヨーロッパで、絵画や演劇における表現主義と並行して生まれた建築運動である。とりわけドイツで隆盛し、おおむね1910年代から1920年代にかけて展開した。オランダや北欧、中欧にも作例がある。
この様式は、形を意図的にゆがめ、あるいは結晶や生物を思わせる造形によって、見る者の感情に直接訴えることを目指した。均整や機能よりも、建築を一つの芸術作品・感情の器ととらえる姿勢が根底にある。煉瓦・コンクリート・ガラス・鉄といった新しい素材が積極的に用いられ、曲面やドーム、鋭く尖った形が好まれた。第一次世界大戦後の革命的な気運のなか、ガラスの建築による社会の刷新を夢見る「ガラスの鎖」のような、紙上の空想的な構想も数多く生まれた。
代表作には、ブルーノ・タウトのガラス・パヴィリオン(1914年)、エーリヒ・メンデルゾーンのアインシュタイン塔(ポツダム、1921年)、ハンス・ペルツィヒの大劇場(ベルリン、1919年)、ルドルフ・シュタイナーのゲーテアヌムなどがある。煉瓦を主役とする変種がレンガ表現主義建築で、フリッツ・ヘーガーのチリハウスがその頂点とされる。オランダのアムステルダム派も同じ潮流に属する。
様式史のうえでは、19世紀末の諸様式やアール・ヌーヴォーを背景に立ち上がり、1925年ごろには、感情の高ぶりを退けて実用と即物性を重んじる新即物主義(ノイエ・ザッハリヒカイト)やモダニズムへと、主導的な建築家の多くが移っていった。短い期間ながら、近代建築の出発点の一つとして重要な位置を占める。
§1
代表建築
Buildings§2