ロータス寺院 Lotus Temple
ニューデリーにあるバハイ教の礼拝堂。1986年完成。建築家ファリボルズ・サバアの設計で、蓮の花を象った27枚の白大理石シェルが九つの入口を囲む。特定の信仰の図像に拠らない普遍的な造形で知られる。
§1 — 概要概要
ロータス寺院(Lotus Temple)は、インドの首都ニューデリー南部のバハプル地区に建つバハイ教の礼拝堂である。1986年に完成し、蓮の花を抽象化した27枚の白大理石シェルが層をなして立ち上がる造形で世界的に知られる。バハイ教の礼拝堂は大陸ごとに置かれ、本堂はインド亜大陸を代表するものとして、宗教や出自を問わず誰もが瞑想に訪れることのできる場として設計された。
歴史
インドにおける礼拝堂建設の構想は1950年代から温められていた。1976年、イラン出身の建築家ファリボルズ・サバアが設計者に選ばれ、インド各地の宗教建築を調査したうえで、ヒンドゥー教・仏教・ジャイナ教・イスラームに共通して尊ばれる蓮を、万人を迎える普遍的な象徴として採用した。1977年に礎石が据えられ、1980年に着工、約6年の工期を経て1986年に竣工した。同年12月24日の献堂式には100を超える国からバハイ教徒が集まった。構造設計はイギリスのフリント・アンド・ニール、施工はインドのラーセン・アンド・トゥブロ社が担当した。
建築的特徴
建物は27枚の花弁状シェルで構成され、三枚ずつを束ねて九つのホールと九つの入口を形づくる。九という数字は、バハイ教において完全と統一を象徴する。花弁は鉄筋コンクリートで造られ、外面はパルテノン神殿にも使われたギリシア産の白大理石で覆われている。内部は柱のない中央ホールで、高さは34メートルを超え、約1,300人を収容でき、花弁の頂部の天窓から自然光が降りそそぐ。周囲には蓮の葉を思わせる九つの水盤が配され、像も祭壇もない簡素な内部とあいまって、瞑想の場としての静寂を生み出している。
意義・現在
ロータス寺院の重要な意義は、特定の信仰の図像に依存せず、自然の形態を抽象化することで普遍的な象徴性を獲得した点にある。曲面シェルによる花弁の造形はしばしばシドニー・オペラハウスと比較され、二〇世紀後半の表現主義的建築の系譜に位置づけられる。アガ・カーン建築賞をはじめ多くの建築賞を受け、構造と象徴が一体化した作品として評価されている。現在では年間数百万人が訪れるニューデリー有数の名所となり、宗教や出自を超えて人々が静かに集う場として機能し続けている。