メキシコシティ、標高約2200メートルの高地に建つサッカー専用スタジアム。ペドロ・ラミレス・バスケスらの設計で1966年に完成し、1970年と1986年のワールドカップ決勝の舞台となった。ラテンアメリカ最大級の収容力を誇る。
§1 — 概要概要
エスタディオ・アステカは、メキシコの首都メキシコシティ、標高約2200メートルの高地に位置するサッカー専用スタジアムである。コヨアカン区にあり、収容人数は8万人を超え、ラテンアメリカ最大級の規模を誇る。リーガMXのクラブ・アメリカおよびサッカーメキシコ代表の本拠地であり、「サッカーの神殿」とも称される。テレビ局を率いたエミリオ・アスカラガの構想のもとに建設された。
歴史
建設は1962年8月に始まり、1966年5月29日に落成した。1970年のFIFAワールドカップでは決勝の舞台となり、ペレを擁するブラジルの優勝とともに、史上初めてカラーで中継された決勝としても記憶される。1986年大会でも決勝が行われ、準々決勝のイングランド戦でディエゴ・マラドーナが「神の手」ゴールと「20世紀最高のゴール」を決めた地としても名高い。2度のワールドカップ決勝を開催した史上初のスタジアムであり、その後も改修を重ねてきた。
建築的特徴
設計はペドロ・ラミレス・バスケスとラファエル・ミハーレス・アルセレカが共同で手がけた。ピッチに迫る急勾配の観客席と大きな庇(キャノピー)が、観衆の歓声を内部に閉じ込め、相手チームを威圧する独特の雰囲気を生み出している。建設にあたっては観覧ボックスの長期使用権を事前に販売して資金を調達しており、これが民間による長期所有という所有形態の背景となった。鉄筋コンクリートによる巨大なすり鉢状の構造体は、20世紀メキシコ・モダニズム建築の頂点の一つに数えられる。
意義・現在
2026年のFIFAワールドカップ開催に向けて2024年から改修のため閉鎖され、2026年3月に再開場した。同年6月11日には大会の開幕戦(メキシコ対南アフリカ)の舞台となり、これにより1970年・1986年に続いて、史上初めて3度のワールドカップを開催したスタジアムとなった。2025年にはネーミングライツ契約により名称が「エスタディオ・バノルテ」へと変更されたが、FIFAのスポンサー規定により、大会期間中は「メキシコシティ・スタジアム(エスタディオ・シウダー・デ・メヒコ)」と呼称される。サッカー史上もっとも物語に富んだ競技場の一つである。