イングランド、マンチェスターのスタジアム。2002年のコモンウェルスゲームズのためアラップの設計で建てられ、のちサッカー用に改修されてマンチェスター・シティFCの本拠となった。十二本のマストとケーブルで吊る屋根を特徴とする。
§1 — 概要概要
イングランド北西部、マンチェスター東部のスポーツ地区に建つスタジアムである。2002年のコモンウェルスゲームズの主競技場として、設計・構造技術集団アラップの手で建てられた。大会後にサッカー専用へと改修され、現在はマンチェスター・シティFCの本拠地となっている。十二本のマストからケーブルで屋根を吊る独創的な構造で知られ、現在はスポンサー名から「エティハド・スタジアム」とも呼ばれる。
歴史
この地はかつての炭鉱跡で、荒廃した一帯の再生の核として、市が「象徴となる建築」を求めたことが計画の出発点であった。1999年12月に定礎、翌2000年1月に着工し、2002年7月25日、コモンウェルスゲームズの開会式をもって幕を開けた。
特筆されるのは、二段階の設計手法である。大会時には陸上トラックを囲む競技場として三方を恒久スタンドで、北側を仮設スタンドで構成し、約三万八千人を収容した。閉会後、トラックを撤去してフィールドを六メートル掘り下げ、新たな下層席を加えることで、四万八千席のサッカー場へと姿を変えた。屋根を支えるマストとケーブルの主構造は、こうした改変とは独立しており、最初の段階で完成していた。マンチェスター・シティFCは2003年にここへ移り、その後も増築が重ねられて、2015年にはサウススタンドに第三層が加えられている。
建築的特徴
楕円を描く外周に沿って、外側に並ぶ十二本のマストからケーブルを張り、波打つ「鞍型」の屋根を吊る。この前張力をかけたケーブルネットの屋根は屋根板の構造から独立し、段階的な建設を可能にした。観客席を取り巻く外周には、設備を収めるコンクリートの塔のまわりを、螺旋状の傾斜路が巻きあがる。フィールドを地面より六メートル低く据えることで、観客を間近に迫らせる「闘技場」のような一体感が生み出されている。葉巻形のマストや屋根の細部にまで意匠が行き届き、ハイテック建築に通じる構造の表現が見てとれる。
意義・現在
シティ・オブ・マンチェスター・スタジアムは、単発の国際大会の施設を、都市の再生と長期の活用へと結びつけた好例として高く評価される。その構造の革新性は、2003年に構造技術者協会の特別賞を、2004年には英国王立建築家協会賞を受けた。一過性に終わりがちな大規模イベントの施設に、確かな「遺産」としての可能性を示した建築である。
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