ヨーロッパ・ビル Europa building
ベルギー・ブリュッセルの欧州地区に立つ、欧州理事会とEU理事会の本部。1920年代のアール・デコ建築レジデンス・パレスの一翼を、フィリップ・サマンの設計でガラスの立方体に包み込み、内部に「ランタン」と呼ぶ会議空間を据えて2016年に完成した。
§1 — 概要概要
ヨーロッパ・ビル(Europa building)は、ベルギー・ブリュッセルの欧州地区、ロワ通りに面して立つ、欧州理事会およびEU理事会の本部建築である。内部に浮かぶ多層の「ランタン(提灯)」と呼ばれる会議空間を最大の特徴とし、その姿は両理事会の公式エンブレムにも採用されている。1920年代のアール・デコ建築を、ガラスの立方体で包み直した、新旧の対比が主題の建物である。
歴史
基部となる建物は、実業家リュシアン・カザンの構想のもと建築家ミシェル・ポラックが設計したレジデンス・パレスのA棟で、1922年から1927年にかけて高級集合住宅として建てられた。第二次大戦後はベルギー政府が取得し官庁として用いた。2004年のEU拡大で旧本部が手狭になると、保護指定されたアール・デコの立面を残す条件で国際設計競技が行われ、2005年にフィリップ・サマン率いるチーム(協働にスタジオ・ヴァッレ・プロジェッタツィオーニ、構造にビューロ・ハッポルド)が選ばれた。工事は2008年に始まり、2016年12月に竣工、2017年初頭から本部として稼働している。
建築的特徴
設計は、L字形に残る1920年代の翼にガラスの壁を立てて立方体のアトリウムを造り、その内側に楕円の床を積み上げた「ランタン」を吊る構成をとる。外壁の一部は、EU各国の改修・解体現場から集めた約3,750枚の木製窓枠を再利用したパッチワークで覆われ、「多様性のなかの統合」という標語を体現する。会議室の内部には画家ジョルジュ・ムーランによる多彩色の幾何学模様が施される。地下を鉄道と道路のトンネルが通るため、構造は軽量に抑えられている。
意義・現在
ヨーロッパ・ビルは、歴史的な立面の保存と現代的な介入を一体に成立させた再生建築であり、太陽光発電や雨水利用を組み込んだ持続可能性への志向でも注目された。アール・デコの記憶を留めつつ、透明性を象徴する「ランタン」を掲げる構成は、EUの自己表象とも結びついている。21世紀のヨーロッパにおける最も重要な政治的中枢の一つとして、首脳会議や閣僚理事会の舞台となっている。