EST. 2026 — Editorial Archive of Notable Architecture
欧州投資銀行本部ビル
© Caroline Martin / CC BY-SA 3.0 IGO
FIG. 01 — Q192247

欧州投資銀行本部ビル European Investment Bank Headquarters

ルクセンブルク市キルヒベルク台地に建つEU金融機関の本部。デニス・ラスダンによる1980年のブルータリズムの低層棟に、インゲンホーフェンによる巨大なガラス屋根の増築棟が2008年に接続された。

FIG. 02 — Location49.6203° N 6.1352° E
ルクセンブルク ルクセンブルク・カントン ルクセンブルク市
§1 — 概要

概要

欧州投資銀行本部ビルは、ルクセンブルク市北東のキルヒベルク台地、EU諸機関が集まる「欧州地区」に建つ。1980年に竣工したイギリスの建築家デニス・ラスダン設計の低層棟(西棟)を核とし、1995年の増築部と、2008年に完成したドイツのインゲンホーフェン建築事務所によるガラス屋根の東棟が加わって現在のキャンパスを構成する。戦後イギリスのブルータリズムを代表する建築家の数少ない国外作品と、環境性能を前面に出した2000年代の大型オフィスとが、ひとつの敷地で向かい合う点にこの建物の特徴がある。

歴史

欧州投資銀行は1958年のローマ条約により設立され、当初はブリュッセルに置かれた。1968年にルクセンブルクへ移り、市内メス広場に最初の本部を構える。手狭になった銀行は、当時整備の進んでいたキルヒベルク台地に新本部を計画した。ラスダンが1973年から74年にかけて設計し、1976年に着工、1980年に竣工して銀行は現在地へ移転する。1995年には同じ事務所の設計による西棟の増築が稼働した。2000年以降の業務拡大を受け、銀行は2002年に第二の増築棟をめぐる国際指名コンペを実施する。審査委員長はリカルド・ボフィル、当選案はデュッセルドルフのインゲンホーフェン建築事務所と、構造をシュトゥットガルトのヴェルナー・ゾベック事務所が担当する組み合わせであった。2005年に定礎、2008年6月に東棟が開所している。

建築的特徴

ラスダンの西棟は十字形の平面をもつ低層建築で、水平の層を張り出しながら積み重ねる構成には、ロンドンのロイヤル・ナショナル・シアターにも通じるこの建築家特有の語法が見られる。台地の縁という立地を生かし、都市側には低く構え、谷側では斜面の緑へ沈み込ませている。インゲンホーフェンの東棟は、これと対照的に透明性を前面に出す。長さ約170メートル、幅約50メートルの全体を、面積およそ1万3千平方メートルの筒状のガラス屋根が一続きに覆い、その下にV字形に開いた事務室棟を並べて、あいだにアトリウムと冬季庭園を挟む。設計者自身はこれを「横倒しにした超高層」と説明しており、鉄とガラスによる軽量な上部構造が昼光を室内の奥まで導く。敷地の傾斜は内部にも持ち込まれ、食堂や会議室が段状のテラスに配される。延床面積は約7万2500平方メートル、収容人数は約750人である。

意義・現在

東棟は、ヨーロッパ大陸で初めて英国のBREEAM評価で「Excellent」を取得した建物であり、自然換気と昼光利用を軸とする2000年代の環境配慮型オフィスの先行例となった。一方の西棟は、ルクセンブルクでは数少ないブルータリズムの遺構として近年再評価が進み、銀行は断熱性能と空間利用の改善を目的とする大規模改修を計画、2025年に設計者を選定している。設計から半世紀を経たコンクリート建築を、解体ではなく改修によって使い続けるという判断そのものが、環境を掲げる機関の現在の姿勢を示している。

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データ: Wikidata (Q192247) / 解説: Wikipedia English / 画像: © Caroline Martin / CC BY-SA 3.0 IGO — Wikimedia Commons
※ ルクセンブルクにはパノラマの自由の規定がなく、ラスダンおよびインゲンホーフェンによる設計の著作権は存続している。掲載画像は欧州投資銀行が CC BY-SA 3.0 IGO で公開したもの。
LAST EDIT — 2026.08.30
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