ファンズワース邸 Farnsworth House
アメリカ、イリノイ州プラノの森のなかに建つ、ミース・ファン・デル・ローエ設計の週末住宅。1951年完成。鉄とガラスでできた平屋を、八本の白い鉄骨で地面から浮かせた、インターナショナル・スタイルの極致である。壁のほとんどがガラスで、内と外との境がとけあう。
§1 — 概要概要
アメリカ、イリノイ州プラノの森のなかに建つ、週末を過ごすための小さな住宅である。建築家ミース・ファン・デル・ローエの設計により、1951年に完成した。鉄とガラスでできた平屋を、八本の白い鉄骨で地面から浮かせた、簡潔をきわめた建築である。インターナショナル・スタイルを代表する一棟であり、20世紀の住宅のなかでも、最も知られたものの一つである。
歴史
シカゴの医師エディス・ファンズワースは、1945年、フォックス川のほとりの土地に週末の家を建てることを思い立ち、ミースに設計を委ねた。建築は1950年に始まり、ミース自身が施工も監督して、翌1951年に完成した。
しかし、費用が当初の見積もりを大きく超えたことから、施主と建築家のあいだに争いが起き、互いを訴える裁判にまで発展した。裁判はミースの側が勝ったが、二人の関係は修復されなかった。ファンズワースは1972年まで住み、その後オーナーは変わり、2003年に歴史保存団体が買い取った。今は一般に公開されている。川の氾濫でたびたび浸水し、その保存が課題となっている。
建築的特徴
住宅は、屋根と床の二枚の水平な板を、八本の白い鉄骨が支える構成をとる。床は地面から1.6メートルほど持ち上げられ、川の増水に備えると同時に、建物が宙に浮くような軽やかさを生む。壁はほぼ全面がガラスで、内部はほとんど仕切りのない一室である。台所や浴室をおさめた芯だけが、唯一の壁となっている。簡素な構造そのものが、そのまま美しさとなる。
意義・現在
ファンズワース邸は、「より少ないことは、より豊かである」というミースの思想を、最も純粋なかたちで結晶させた建築である。装飾を削ぎ落とし、構造と空間だけで成り立つその姿は、近代建築が到達した一つの極点を示している。その構想は、フィリップ・ジョンソンのガラスの家にも影響を与え、後世の住宅建築の一つの指標となった。
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