フランス西岸、エクス島とオレロン島の間の砂洲に築かれた楕円形の海上要塞。ロシュフォール軍港を守るためナポレオンが着工させたが、完成時には砲の射程が伸びて無用となった。テレビ番組の舞台としても知られる。
§1 — 概要概要
フォール・ボワヤール(Fort Boyard)は、フランス西岸、エクス島とオレロン島に挟まれたアンティオシュ海峡の砂洲(ボワヤール堆)の上に築かれた海上要塞である。全長約68メートル・幅約31メートルの細長い楕円形をなし、海面からそそり立つ姿は「石の船」とも形容される。軍事的な役目をほとんど果たさないまま終わったが、その異様な立地から、後にテレビ番組や映画の舞台として広く知られるようになった。
歴史
ボワヤール堆に砦を築く構想は17世紀から存在したが、波に洗われる砂洲の上に基礎を据えることは技術的に困難で、たびたび断念された。計画が本格的に動き出すのは、ロシュフォール軍港をイギリス艦隊の侵入から守ろうとしたナポレオン・ボナパルトの時代である。1801年に技術者らがナポレオンに具体案を答申し、対岸のオレロン島には資材置場と労働者の集落ボワヤールヴィルが築かれた。1804年5月に最初の石が投じられて工事が始まったが、積み上げた石はたびたび嵐に崩され、1809年に中断する。約30年を経た1837年、ルイ・フィリップ治下で英仏間の緊張を背景に工事は再開され、要塞はようやく1857年に完成した。
建築的特徴
要塞は、海中に人工の基盤を築いてその上に石造の躯体を載せるという、当時としては破格の難工事の産物である。基礎はシャュジー産の花崗岩で守られ、躯体にはクラザンヌ産の石灰岩が積まれた。中央に内庭を抱え、一階には兵員と将校のための居室や倉庫を、二階には大砲を据えるカズマット(砲郭)を配して、四囲の海面に火力を向けられるように設計された。最大で約250名の守備兵を収容できたとされる。
意義・現在
皮肉なことに、長い歳月をかけて完成したときには大砲の射程が飛躍的に伸び、エクス・オレロン両島の砲台でこの海域を覆えるようになっていたため、要塞は早くも無用の長物と化していた。その後は短期間の軍事監獄を経て1913年に放棄され、荒廃するにまかされた。1950年に歴史的記念物に登録され、近年は修復が進められている。1990年以降はテレビ・ゲーム番組「フォール・ボワヤール」の舞台として国際的に知られ、本来の軍事的役割とはまったく異なる第二の生を得ている。