アゼルバイジャン、シャマフに建つジュマ・モスク。743年の創建を伝えるカフカース最古級のモスクで、二基のミナレットをもつ現在の姿は20世紀初頭の再建による。
§1 — 概要概要
アゼルバイジャン東部、かつてシルヴァン地方の都として栄えたシャマフに建つ金曜モスク(ジュマ・モスク)である。8世紀の創建を伝え、デルベントのモスクに次ぐカフカース最古級のイスラーム建築とされる。度重なる地震と戦火によって幾度も再建され、二基のミナレットをもつ現在の姿は20世紀初頭の復興によるものである。
歴史
モスクの創建はヒジュラ暦126年(西暦743/744年)と伝えられ、ウマイヤ朝によるカフカース統治の時代にさかのぼる。シャマフはシルヴァンシャー朝の都として長く栄え、12世紀にはモスクも大規模な改築を受けた。その後も損壊と再建を繰り返し、1859年と1902年の地震で甚大な被害を受けたのち、1909年にズィヴェル・ベイ・アフマドベヨフとユゼフ・プウォシュコらの設計で再建された。2010年から2013年にかけては大規模な修復が施され、現在の姿が整えられた。
建築的特徴
方形の祈祷室を三つの区画に分け、それぞれにミフラーブを設ける独特の平面構成をとる。この三分割の平面は中世以来の伝統を受け継ぐものとされ、カフカースのモスクのなかでも珍しい。中央のドームと、正面に並び立つ二基のミナレットが外観を強く特徴づけ、堂々たる量感を示す。20世紀の再建にあたっては、古い平面を踏襲しつつ、シルヴァン=アブシェロン建築学派の石造の伝統に連なる落ち着いた意匠としてまとめられた。
意義・現在
創建から現在まで一千年以上にわたり、シャマフの宗教的な中心であり続けてきた。たび重なる破壊と再建の歴史は、地震多発地帯に立つカフカースの石造建築が辿った宿命をよく物語る。古い創建の記憶を保ちながら新たに整えられた建物は、現在もアゼルバイジャンを代表する歴史的モスクの一つとして篤く保存され、ふたたび人々の礼拝の場として用いられている。