エレバン中心部、フラズダン川の峡谷を渡す七連アーチの石橋。第二次世界大戦の対独戦勝を記念して1945年に開通し、市の東西を結ぶ。アルメニア語名ハフタナクは「勝利」を意味する。
§1 — 概要概要
アルメニアの首都エレバンを流れるフラズダン川の峡谷に架かる、車道用のアーチ橋である。フラズダン川はエレバンの市街を深い谷となって分かっており、本橋はその両岸を結ぶ主要な渡河地点の一つである。市中心部のマシュトーツ大通りと、対岸のアドミラル・イサコフ大通りを結ぶ。第二次世界大戦末期の1945年に開通し、ナチス・ドイツに対するソ連の勝利を記念して「勝利橋(ハフタナク橋)」と名づけられた。
歴史
橋は大戦下に計画・建設され、1945年11月25日に開通した。構造を担ったのは技師シモン・ホヴナニャンで、意匠の設計はアルメニアの建築家アルタシェス・マミジャニャンと共同設計者A・アサトリャンが手がけたと伝えられる。戦勝の記念碑的な性格を帯びた構造物として、戦後復興期のエレバンの都市景観を象徴する存在となった。橋の名は、ソ連の対独戦勝という時代の記憶と分かちがたく結びついている。
建築的特徴
峡谷を一気に渡すため、七つのアーチを連ねた構成をとる。全長は約200メートル、幅は約25メートルを測り、高さは川面から約34メートルに達して、深い谷の地形を石造アーチの反復によって克服している。橋の両端には小さな広場が設けられ、峡谷の右岸にはエレバン・ブランデー工場、左岸にはワイン工場が臨む。装飾を抑えた重厚な造形は、戦後ソ連圏に広く見られた記念碑的な構築物の性格をよく示しており、土木構造物でありながら都市の門のような存在感をもつ。
意義・現在
勝利橋は、エレバンの東西市街を一体化させる交通の要であると同時に、対独戦勝という20世紀半ばの歴史を刻む記念物でもある。ケントロン地区の歴史文化記念物に登録され、土木遺産としての価値も認められている。今日も現役の橋として使われ、峡谷を跨ぐその姿は、自然の地形と人工の構築物とが拮抗するエレバンらしい景観の一部をなしている。