アルメニアの首都イェレヴァンに建つ古文書館。世界有数のアルメニア語写本コレクションを収蔵し、玄武岩造の建物は中世アルメニア建築に着想を得る。
§1 — 概要概要
マテナダラン(Մատենադարան)は、アルメニアの首都イェレヴァンに建つ古文書館で、正式にはメスロプ・マシュトツ古文書研究所という。世界最大級のアルメニア語写本コレクションを所蔵し、博物館・文書館・研究機関の機能を兼ねる。アルメニア文字の創始者メスロプ・マシュトツにちなんで名づけられ、その像が正面に立つ。
歴史
収蔵品の源流は、エチミアジンのアルメニア使徒教会が伝えてきた写本群にさかのぼる。これを国有化したコレクションを基礎に、1959年、現在の建物において研究機関としてのマテナダランが正式に発足した。建物そのものは建築家マルク・グリゴリャンの設計により1945年に着工され、戦後の労働力不足による中断を挟みつつ1957年ごろに主要部が竣工、内装は1959年までに整えられた。グリゴリャンはその意匠の「過剰」を理由に、当局から譴責を受けたとも伝えられる。
建築的特徴
建物は地元産の灰色の玄武岩で覆われた、簡素な立方体を基調とする。中世アルメニアの修道院建築、とりわけサナヒンやハフパトのガヴィット(前室)に着想を得た外観と内部空間が特徴で、幾何学的な量塊の上に、節度ある彫りの装飾が施される。エジプトのエドフ神殿やアニの遺構をも参照したとされ、近代の機能をもつ建築に中世の記憶を重ねた、ソビエト・アルメニアの国民様式を代表する作例となっている。
意義・現在
マテナダランは、写本という文字文化の遺産を守る器であると同時に、それ自体が中世建築の形を現代によみがえらせた記念碑でもある。所蔵する古文書群はユネスコ「世界の記憶」に登録され、アルメニアの文化的アイデンティティの中核を担う。2009年前後にはアルトゥール・メシヤンの設計による新館が増築され、増え続ける収蔵品に対応している。現在もイェレヴァンを代表する文化施設として公開されている。
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