アルメニア歴史博物館 History Museum of Armenia
エレバンの共和国広場に面する国立博物館。1919年創設の機関を収める建物は、タマニャンに始まる広場の建築群を締めくくる一棟で、グリゴリャンらの設計により1950年代から1977年にかけて建てられた。淡紅色の凝灰岩による新古典主義建築である。
§1 — 概要概要
アルメニア歴史博物館(Հայաստանի Պատմության Թանգարան、History Museum of Armenia)は、アルメニアの首都エレバンの共和国広場に面して建つ国立博物館である。先史時代から20世紀に至るアルメニアの歴史を、考古・民族誌・貨幣・近代史などの分野にわたって展示する。博物館が入る建物は、ソ連時代に整えられた共和国広場の建築群の一棟で、国立美術館と同じ建物を共有する。アルメニアの国民的博物館として位置づけられる。
歴史
博物館(機関)そのものは1919年にアルメニア国民議会の議決によって創設され、1921年に一般公開された。当初は民族誌・人類学博物館・図書館として出発し、その後たびたび改称を重ねて現在の名称に落ち着いた。
一方、現在の建物は機関の創設より大きく下る。エレバンの都市計画を立てた建築家アレクサンドル・タマニャンの構想に基づき、共和国広場(旧レーニン広場)の建築群が1920年代から段階的に建てられた。博物館と美術館を収めるこの東側の棟は広場で最後に完成した建物で、建築家マルク・グリゴリャンとエドゥアルド・サラピャンの設計により、1950年代から1977年にかけて建設され、1975年ごろに現在の姿となった。
建築的特徴
建物は、地元産の淡紅色の凝灰岩を主材とする新古典主義の様式で、ソ連時代の記念碑的建築に共通する重厚な対称構成をとる。同時に、列柱やアーチ、壁面の浮彫には、ゲガルドやハフパトといった中世アルメニア建築に由来する装飾モチーフが取り入れられ、地域性が刻まれている。広場を縁取る他の建物と同じ石材・同じ語彙で設計され、三十年以上にわたる建設にもかかわらず統一感のある景観を作り出している。広場の噴水と向かい合う立地も、建築群の一体性を強めている。
意義・現在
アルメニア歴史博物館の建物は、タマニャンに始まる共和国広場の建築群を締めくくる一棟として、20世紀アルメニア建築を代表する事例である。ソ連の様式を基盤としつつ、中世アルメニアの造形を織り込んだ点に、この時代の地域建築の性格がよく表れている。館は40万点に及ぶ収蔵品を擁し、なかでもウラルトゥ王国の青銅器や金細工は名高い。現在も国立美術館とともに、共和国広場でもっとも訪れる人の多い建物の一つとなっている。