インド・ムンバイのウォルリ沖の小島に建つ、スーフィー聖者を祀る廟とモスク。1431年に創建され、満潮時には海に浮かぶように見える。白大理石のインド・イスラーム建築で、ムンバイを代表する宗教的ランドマークである。
§1 — 概要概要
ハージー・アリー・ダルガー(Haji Ali Dargah)は、インド・ムンバイのウォルリ沖、アラビア海に浮かぶ小島に建つ、スーフィーの聖者を祀る廟(ダルガー)とモスクである。岸から約500メートル離れた岩礁の上に築かれ、本土とは約1キロメートルの細い堤道で結ばれる。堤道には欄干がなく、満潮時には水没して島は孤立し、白い建物が海に浮かんでいるように見える。白大理石によるインド・イスラーム建築の佳品として知られ、ムンバイを代表する宗教的ランドマークである。
歴史
廟は、1431年、聖者サイイド・ピール・ハージー・アリー・シャー・ブハーリーを記念して建てられた。彼は、現在のウズベキスタンのブハラ出身の裕福な商人であったが、全財産を捨ててメッカへの巡礼を果たし、ムンバイに定住してイスラームの教えを広めたとされる。伝説によれば、彼は自らの死後、亡骸を海に流すよう遺言し、その柩が流れ着いた場所に廟が築かれたという。現在の建物は、その後の改修・再建を重ねた姿である。1916年にハージー・アリー廟財団(トラスト)が設立され、1950年に療養所と門が、1964年にはモスクと廟本体の大規模な改修が加えられた。2008年以降は、タージ・マハルと同じマクラーナ産の白大理石を用いた構造補強と美化が進められている。
建築的特徴
ムガル建築の影響を受けたインド・イスラーム様式で、白を基調とする。聖者の墓を納める白いドームの霊廟が中心に据えられ、墓は赤と緑の錦の覆い(チャダル)と銀の枠で飾られ、八本の大理石の柱に囲まれている。主室の大理石の柱には、青・緑・黄のガラス片を万華鏡のように組み合わせた鏡細工が施され、アラビア文字で「アッラーの九十九の美名」が綴られている。約4,500平方メートルの敷地には、大理石の中庭、男女別の礼拝室、療養所、カッワーリーの演奏堂(カッワール・ハーナ)などが配される。約26メートルのミナレットが、外観の際立った見どころとなっている。
意義・現在
ハージー・アリー・ダルガーは、信仰や宗教の別を問わず、多くの人々が訪れる聖地である。木曜と金曜には特に多くの巡礼者が集い、スーフィーの宗教音楽カッワーリーが奉納されることもある。海に浮かぶ独特の姿は、ムンバイでもっとも写真に撮られる景観の一つに数えられる。2016年には、ボンベイ高等裁判所が、女性も聖室への立ち入りを認められるとの判断を示した。塩分を含む海風と多数の参拝者にさらされながら、なお人々の篤い信仰を集めつづけている。
関連する建築
Related※ フリーアート・ライセンス(FAL、コピーレフト)。クレジット表示のうえ同一ライセンスでの再配布が必要。