アレクサンダル・ニコリッチ・ホール Hall Aleksandar Nikolić
セルビアの首都ベオグラードにある室内競技場。1973年、リリャナとドラゴリュブのバキッチ夫妻が短い工期で設計し、反復するモジュールと自然光を生かした旧ユーゴスラビアの近代建築を代表する作例。旧称ハラ・ピオニル。
§1 — 概要概要
セルビアの首都ベオグラード、パリルラ地区に建つ室内競技場である。約8,000席を備え、バスケットボールをはじめとする屋内競技の拠点として知られる。プールなどを含むスポーツ複合施設の中核をなし、設計はリリャナ・バキッチとドラゴリュブ・バキッチの夫妻による。反復する構造単位と自然採光を主題とした構成は、旧ユーゴスラビアの近代建築を代表する作例として評価されている。旧称はハラ・ピオニル(ピオニル・ホール)。
歴史
1973年、限られた工期のもとで建設された。バキッチ夫妻はこの設計によりベオグラード建築サロンのグランプリを受賞している。完成後はベオグラードを代表する大規模アリーナとして、1975年欧州バスケットボール選手権の決勝ラウンドや1976–77年シーズンの欧州チャンピオンズカップ決勝、1989年の世界柔道選手権など、数々の国際大会の舞台となった。2016年、セルビアのバスケットボール指導者アレクサンダル・ニコリッチを記念して現在の名称に改められ、2019年には客席や設備を一新する大規模改修が行われている。
建築的特徴
構造の単位を反復させ、それをそのまま外観の秩序とする手法に特色がある。連続するフレームが生み出すリズムと、そこを通して内部へ導かれる自然光が、無装飾ながら明快な造形を支えている。広い無柱空間を確保しつつ観客の視線と動線を整理する平面は、競技施設に求められる機能を率直に建築化したものである。素材や構造をそのまま見せる態度は、戦後ユーゴスラビアの近代建築に通じる。
意義・現在
バキッチ夫妻はフィンランドのアルヴァ・アアルトのもとで研鑽を積んでおり、本作にもその合理的で人間的な近代建築の系譜がうかがえる。完成から半世紀を経た現在も現役の競技施設として用いられ、改修を重ねながらベオグラードの戦後建築を語るうえで欠かせない存在となっている。