エルサレム市西部の玄関口に架かる斜張橋。スペインの建築家サンティアゴ・カラトラバが設計し、2008年に開通した。竪琴を思わせる一本の白い支柱から放射状にケーブルを張り、軽量電車と歩行者がともに渡る。
§1 — 概要概要
弦の橋(Chords Bridge、英: Bridge of Strings、ヘブライ語: גשר המיתרים)は、イスラエルのエルサレム市西端、市街地への主要な入口にあたる地点に架かる斜張橋である。スペインの建築家・構造家サンティアゴ・カラトラバが設計し、2008年に開通した。エルサレム・ライトレールの路面電車と、ガラスで囲まれた歩行者用通路をあわせて支える複合的な橋であり、当初から都市のランドマークとして計画された。
歴史
建設は2005年に始まった。当時の市長エフード・オルメルトと市技師の招きでカラトラバが起用され、彼に「最も美しい現代の橋」を求める課題が託されたと伝えられる。総工費は約2億4600万シェケル(当時のレートで約7000万ドル)に達し、当初の見積もりを大きく上回った。2008年6月25日に落成式が行われ、橋が支えるライトレール赤線は2011年8月に営業運転を開始した。費用と工期の超過は地元で議論を呼んだが、開通後は市の玄関口を象徴する構造物として定着している。
建築的特徴
構造の核心は、高さ118メートルに及ぶ一本の白い支柱(パイロン)である。支柱は鉛直に立てず後方へ大きく傾け、そこから扇状に展開する多数のスチールケーブルが橋桁を吊る。荷重をケーブルから一点の支柱へ集める片持ち式の斜張構造であり、橋脚や桁下の支えを最小限に抑えることで軽快な外観を生んでいる。竪琴または弓を思わせるその姿は、「弦の橋」「弦楽器の橋」という通称の由来となった。橋面にはガラスの側壁をもつ歩道が組み込まれ、利用者は構造の内部を歩いて渡ることができる。
意義・現在
弦の橋は、橋梁を純粋な土木構造物にとどめず、彫刻的な都市のモニュメントへと押し上げたカラトラバの作風を端的に示す。構造そのものを意匠として見せる構造表現主義の系譜に連なり、技師と建築家を兼ねる設計者の立場をよく表す作例である。エルサレムの近代化を象徴する事業として賛否を伴いながらも、現在は市西部の景観を定義する存在となり、ライトレール網の要として日々機能している。