ボスニア・ヘルツェゴビナのモスタルに建つ、16世紀オスマン朝の単一ドーム・モスク。地域でも屈指の規模を誇り、内戦で破壊されたのち2004年に再建された。
概要
カラジョズ・ベグ・モスク(Karađoz-begova džamija)は、ボスニア・ヘルツェゴビナ南部の都市モスタルに建つモスクである。1557年にオスマン朝下で完成し、大きな単一のドームと高いミナレットをもつ、この地域でも最大級の礼拝堂として知られる。旧市街の中心に位置し、オスマン期のモスタルを代表する建築の一つである。
歴史
寄進者はカラジョズ・メフメド・ベグ。当地の有力者であり、その名がモスクに冠されている。建立は西暦1557年(イスラーム暦965年)にあたる。設計は宮廷建築家オスマン建築の大成者ミマール・スィナンの手によるとする説があるが、確証はなく、スィナンまたはその工房の関与とみるのが穏当である。
1992年から1993年のボスニア紛争において、モスクは砲撃を受けて大きく破壊され、ミナレットは倒壊した。戦後、オリジナルの図面と残存部材に基づく修復事業が進められ、2004年に再建が完了した。
建築的特徴
平面は、四角い礼拝室の上に直径の大きなドームを一つ架ける、古典オスマン様式の単一ドーム形式をとる。方形の壁から円いドームへの移行には、隅をすぼめるペンデンティヴが用いられる。正面には小ドームを連ねた前廊(玄関ポーチ)が付き、傍らに一本の細く高いミナレットが立つ。礼拝室の奥、メッカの方角を示す壁にはミフラーブが穿たれる。明快な幾何学と均整のとれた立面は、16世紀オスマン建築の成熟を伝える。
意義・現在
カラジョズ・ベグ・モスクは、ボスニア・ヘルツェゴビナに残るオスマン建築の白眉に数えられる。紛争による破壊と、その後の忠実な再建という経緯は、モスタルの歴史的景観の喪失と回復を象徴するものでもある。現在はボスニア・ヘルツェゴビナの国定文化財に指定され、礼拝の場であると同時に、訪れる人にオスマン期の都市の記憶を伝えている。