リンカーン記念館 Lincoln Memorial
ワシントンのナショナル・モール西端に建つ、第16代大統領リンカーンを記念する建造物。1922年完成、設計はヘンリー・ベーコン。ドーリア式の古典神殿の形式をとり、内部にフレンチ作の坐像を据える。
§1 — 概要概要
リンカーン記念館は、アメリカ合衆国の首都ワシントンD.C.のナショナル・モール西端に建つ、第16代大統領エイブラハム・リンカーンを記念する建造物である。設計はヘンリー・ベーコン。古代ギリシアの神殿を範とした古典様式の外観をもち、内部中央にはダニエル・チェスター・フレンチによるリンカーンの坐像が据えられる。南北戦争を経て合衆国を再統合した大統領を顕彰する国家的記念物であり、合衆国を代表するランドマークの一つである。
歴史
リンカーンを記念する構想は暗殺直後から繰り返し提起されたが、長く実現しなかった。1911年に記念館委員会が設けられ、ポトマック川の干拓地であるモール西端が建設地に選ばれた。ヘンリー・ベーコンの設計が採用され、1914年2月12日(リンカーンの誕生日)に起工式が行われた。基礎は岩盤まで杭を打って築かれ、1915年から1917年にかけて石造の上部構造が立ち上げられた。第一次世界大戦による資材不足などで工期は延びたが、1920年にフレンチの坐像が据えられ、1922年5月30日(戦没者追悼の日)に献堂式が挙行された。式典は最高裁長官ウィリアム・タフトが主宰した。
建築的特徴
記念館はギリシアの神殿、とりわけパルテノンを意識した古典主義の構成をとる。外周をめぐる36本のドーリア式円柱は、リンカーンの死の時点で連邦に属した36州を表し、列柱上部の48の花綱は1922年当時の48州を象徴する。白い大理石を主体とし、コロラド産をはじめ各州の石材が用いられた。内部は三室に分かれ、中央室にフレンチの坐像、両翼の壁面にゲティスバーグ演説と第二就任演説が刻まれ、ジュール・ゲランの壁画が掲げられる。設計者ベーコンと彫刻家フレンチは、坐像を照らす天井の採光にも工夫を凝らした。
意義・現在
リンカーン記念館は、完成以来アメリカで最も訪問者の多い記念建造物の一つとなり、合衆国の硬貨や紙幣にも描かれている。同時にこの場所は、人種をめぐる歴史の節目の舞台ともなってきた。1939年には、演奏を拒まれた歌手マリアン・アンダーソンが記念館前の階段で演奏し、1963年にはワシントン大行進でマーティン・ルーサー・キング・ジュニアが「私には夢がある」と演説した。記念碑としての建築が、公的な記憶と市民的権利の象徴へと意味を広げていった例として知られる。