バルセロナ、モンジュイックの丘の麓に設けられた大噴水。1929年のバルセロナ万国博覧会のために技師カルラス・ブイガスが設計し、水・光・色彩の演出で噴水を一個の見世物建築へ高めた記念碑的作例である。
§1 — 概要概要
モンジュイックの魔法の噴水(カタルーニャ語: Font màgica de Montjuïc)は、バルセロナのモンジュイックの丘の麓、国立宮殿(パラウ・ナシオナル)の真下に位置する大噴水である。アビングダ・マリア・クリスティーナの軸線の起点をなし、カタルーニャの技師カルラス・ブイガス(Carles Buïgas)の設計になる。夜間には水・光・色彩・音楽を組み合わせた演出が行われ、バルセロナを代表する見どころのひとつとなっている。
歴史
噴水は、モンジュイックの丘一帯の開発とともに、1929年のバルセロナ万国博覧会のために建設された。照明噴水を1922年から手がけていたブイガスは、博覧会の約1年前に大胆な設計案を提出したが、その壮大さゆえに実現を疑問視する声も多かった。3,000人を超える労働者が投入され、1年に満たない工期で完成し、博覧会開幕前日の1929年5月19日に最初の上演が行われた。スペイン内戦で大きく損傷したのち、ブイガス自身の監修による修復を経て1955年に再び稼働した。1980年代には音楽が加えられ、1992年のバルセロナ・オリンピックに先立って全面的に整備された。
建築的特徴
平面は楕円形で、長径65メートル・短径59メートルに及ぶ。三段の同心円状の水盤からなり、30を超える噴出口と毎秒数百ガロンに達する送水を、高出力の電動ポンプが支える。光と色は120個のプリズムによって生み出される仕組みで、創建時の機構が長く用いられてきた。建築というよりは巨大な水利・照明装置であり、技師の構想力が形を決めた点に特色がある。周囲の宮殿・カスケード・大通りと一体の舞台として設計され、博覧会建築の記念碑的な性格を色濃く帯びる。
意義・現在
魔法の噴水は、水と光をもって都市空間を一夜の舞台に変える「見世物としての建築」の先駆的な達成である。技術と演出を融合させたブイガスの発想は、後の世界各地の照明噴水に影響を与えた。バルセロナ市民にとっては万博の記憶を伝える象徴であり、年中行事メルセ祭のフィナーレを飾る花火と音楽の競演でも知られる。近年は照明をLEDに替えるなど、保存と省エネルギーの両立が図られている。