ウィーン北部、ドナウ運河沿いの再開発地区に建つ複合型の超高層ビル。グスタフ・パイヒルとボリス・ポドレッカらの設計で1999年に完成し、二つの円筒を組み合わせた全面ガラス張りの姿をもつ。高さ202メートルは、完成当時オーストリアで最も高かった。
§1 — 概要概要
ミレニアム・タワー(Millennium Tower)は、オーストリアの首都ウィーン北部、第20区ブリギッテナウのドナウ運河沿いに建つ複合型の超高層ビルである。高さ202メートル・地上50階で、1999年の完成当時はオーストリアで最も高い建築物だった。オフィスを主用途としながら、住宅やショッピングセンター、映画館を抱える「ミレニアム・シティ」と呼ばれる複合街区の中核をなす。グスタフ・パイヒル、ボリス・ポドレッカ、ルドルフ・ヴェーバーの三者による設計で、その名のとおり新たな千年紀の到来に合わせて建てられた。
歴史
計画は1990年代後半に進められ、運河沿いの旧来の産業地区を業務・商業・居住の複合拠点へと再生する都市再開発の一環であった。建設は1997年に始まり、効率的な工程管理と当時の先進的な施工技術によって、週あたり平均で2階半という異例の速さで階を積み上げ、わずか2年ほどで1999年に竣工した。塔の足元には大規模な商業施設が同時に整備され、2000年の開業をもって複合街区の全体が稼働した。完成から十数年にわたってオーストリア最高層の座を保ったが、2013年に同じくウィーンに建つDCタワー1にその記録を譲った。
建築的特徴
最も目を引くのは、二つの円筒形のヴォリュームを抱き合わせるように組み合わせた平面構成である。互いに食い込む二つの曲面が塔の輪郭を柔らかくまとめ、その全面がカーテンウォールのガラスで覆われている。光を受けて刻々と表情を変えるガラスの皮膜は、鉄とコンクリートの量塊を感じさせない軽快さを与え、運河の水面と呼応する。商業を担う低層部の上に事務所層が積み上がり、用途ごとに性格の異なる空間を一つの塔のなかに重ねている。装飾を排した端正な造形は、機能を率直に形へ移すパイヒルらの合理的な作風をよく示している。
意義・現在
ミレニアム・タワーは、世紀の変わり目のウィーンが描いた都市像を体現する建築である。歴史都市の中心から少し離れた運河沿いに高層の核を据え、業務・商業・住居を一体に束ねるその発想は、以後ウィーンで続く高層開発の先例となった。現在もオフィスと商業施設として日常的に使われ、ドナウ運河越しに望むその姿は、ウィーン北部のスカイラインを特徴づける目印でありつづけている。