ロンドン自然史博物館 Natural History Museum
ロンドン、サウス・ケンジントンに立つ自然史博物館。アルフレッド・ウォーターハウスの設計で1873年に着工、1881年に開館した、全面をテラコッタで覆うロマネスク・リヴァイヴァルの記念碑的建築。
§1 — 概要概要
ロンドン自然史博物館(Natural History Museum)は、ロンドン中心部サウス・ケンジントンの文化施設群に立つ国立博物館である。大英博物館の自然史部門の収蔵品を母体とし、専用館として建設された。アルフレッド・ウォーターハウスの設計になる本館は、全面をテラコッタで覆ったロマネスク・リヴァイヴァルの記念碑的建築であり、しばしば「自然の大聖堂」と評される。1992年まで正式名称は「大英博物館(自然史)」であった。
歴史
膨張する自然史コレクションのために独立した館を求めたのは、博物学者リチャード・オーウェンであった。設計競技は技師フランシス・ファウクが制したが、彼の急逝を受けて1866年にウォーターハウスが起用され、計画を大幅に改めて、大陸への旅行で親しんだ独自のロマネスク様式に外観をまとめ直した。工事は1873年に始まり1880年に竣工、1881年4月18日に開館した。当初計画にあった両翼は予算の都合で見送られ、その敷地はのちに地球ギャラリーやダーウィン・センターに充てられている。
建築的特徴
内外装には、ヴィクトリア朝ロンドンの煤煙に強く、精緻な装飾を比較的安価に量産できるテラコッタが全面的に用いられた。これはイングランドで初めて全面をテラコッタで覆った建物とされ、タムワースのギブズ・アンド・カニング社が製造を担った。壁面や柱には動植物のレリーフが施され、向かって西翼に現生種、東翼に絶滅種を配する。これはダーウィンの進化論に懐疑的だったオーウェンの意向によるもので、建物自体が展示物として内部の機能を語る仕掛けとなっている。中央のヒンツェ・ホールは丸アーチや交差ヴォールトを連ね、鉄とガラスを併用して自然光を採り入れた、聖堂を思わせる大空間である。
意義・現在
ロマネスクをこれほどの規模で、かつ豊かなテラコッタ装飾とともに展開した例は他になく、本館はイングランドの第一級指定建造物(グレードI)に登録されている。入館は無料で、ヒンツェ・ホールに吊られたシロナガスクジラの骨格「ホープ」(2017年に恐竜ディプロドクスの複製と交代)をはじめ、年間数百万人を迎える世界有数の自然史博物館として親しまれている。建物そのものが、科学と建築が結びついたヴィクトリア朝文化の精華を今に伝えている。